アメリカのポンペイオ国務長官とムニューシン財務長官は10日、ホワイトハウスで会見を開き、イランがイラクにあるアメリカ軍の拠点を攻撃したことを受け新たな制裁を科すと発表しました。
対象はイランの最重要政策を決める最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長など8人の高官のほか、イランの鉄鋼やアルミニウムなどに関わる17の企業、それにイランの金属製品を取り引きした中国の貿易会社などです。
高官らはアメリカの資産を凍結され、アメリカ人との取り引きが禁じられます。
ムニューシン財務長官は会見で、「今回の制裁でイランの体制は何十億ドルもの収入を失う」と強調しました。
また、ムニューシン財務長官はトランプ大統領の大統領令でイランの建設業や製造業、繊維産業など幅広い産業への制裁が可能になるとして、今後も制裁の対象を拡大し、イランへの圧力を強めていく方針を示しました。
一方でアメリカメディアの中にはロシアや中国との取り引きが続くため効果は不透明だという指摘も出ています。
イランからウクライナに向かっていたウクライナ国際航空の旅客機は8日、首都テヘラン近郊の空港を離陸後まもなく墜落し、180人近い乗客乗員全員が死亡しました。
これについてアメリカのポンペイオ国務長官は10日の記者会見で問われ、「われわれはその航空機がイランのミサイルによって撃墜された可能性があると考えている」と述べました。
そのうえでウクライナのゼレンスキー大統領や多くの乗客が旅客機に乗っていたカナダ側とも電話会談を行い、協議したと明らかにしました。
ウクライナの旅客機の墜落をめぐってトランプ大統領は前日の9日、「誰かが間違いをした可能性がある」としたうえで、イランが誤って撃墜した可能性については「わからない」と述べるにとどまっていて、アメリカ政府としてイランによる撃墜の可能性を明確に言及したのはポンペイオ長官が初めてです。
アメリカ政府は各国による調査に協力し、調査結果を踏まえて対応を決める方針で、調査結果とともにアメリカ政府の対応も今後の焦点となりそうです。
今月8日、イランからウクライナに向けて首都テヘラン近郊の空港を飛び立ったウクライナ国際航空の752便は離陸後まもなく墜落し、180人近い乗客乗員全員が死亡しました。
旅客機が墜落したのは、イランがアメリカ軍のイラクの拠点を攻撃した4時間後で、欧米各国はイランが誤ってミサイルで撃墜したとの見方を示していました。
イランは当初、撃墜を全面的に否定していましたが、イラン軍は11日、声明を発表し、「ウクライナの旅客機は人為的なミスによって攻撃された」として、一転して旅客機を撃墜したと認めました。
声明でイラン軍は「旅客機が旋回時に革命防衛隊の重要な施設に接近し、飛行形態や高度から敵の航空機にみえた」として、敵機と誤認して攻撃したという認識を示しました。
これを受けて、ロウハニ大統領は声明で「この悲劇の遺族に深い哀悼の意を表し、必要な手だてをとって罪を償いたい」として、犠牲者や遺族に謝罪の意を示しました。
一方で「イラン軍はアメリカによる威嚇と攻撃に備えて100%の警戒態勢にあり、これが人為的なエラーにつながって誤射を起こしてしまった」として、アメリカが緊張を高めたことが事故につながったと主張しました。
墜落した旅客機の乗客にはイラン国籍の82人とカナダ国籍の57人、またウクライナ、スウェーデン、アフガニスタン、ドイツ、イギリス国籍の人が含まれていて、カナダやイギリスなどはイランに調査団を派遣する方針を示しています。
またイラン側もこれを受け入れる姿勢を示し、10日にブラックボックスの解析など調査を始めたことを明らかにしていました。
イランとしては欧米各国の原因究明の動きが本格化する中、これに先立って独自に調査した結果としてみずから撃墜を認めることで、この問題での対立の長期化を避けたいという思惑があるとみられます。
イランの政府系通信社「ファルス通信」は最高指導者ハメネイ師が前日の10日、緊急の最高安全保障会議の開催を指示し、調査結果を踏まえ、誤って旅客機を撃墜したことを公表するよう指示したと伝えています。
それによりますと、これまでの調査委員会の調査の結果、旅客機が人為的なミスが原因で防空システムによって撃墜されたことが明らかになり、10日朝に最高指導者ハメネイ師とロウハニ大統領に報告されたということです。
これを受けて、ハメネイ師は10日昼、国の最重要政策を決定する最高安全保障会議を緊急で開催するよう指示しました。
そして、10日夜に最高安全保障会議が開かれ、その後、ハメネイ師の指示に基づき、誤って旅客機を撃墜したことをイラン国民や関係者に公表したとしています。
首都テヘランでは、市民の間で怒りや悲しみの声が相次ぎました。
このうち55歳女性は「非常に憤慨している。イラン政府は何が起きていたか最初から分かっていたはずだ。これは最悪のうそだ。彼らは謝罪しなければならない」と話していました。
また61歳男性も「このような過ちが起きたことをとても申し訳なく思うし、怒っている。アメリカと対決しているという非常に難しい状況の中で、アメリカが反撃してくるかもしれないということで、このような人為的な間違いが起きてしまったのだろう。関係者は謝罪すべきだ」と話していました。
また別の65歳男性は「謝罪するべきだし、犠牲者の家族には償われるべきだと思う」と話していました。
イラン軍が誤って撃墜したと認めたことを受け、カナダのトルドー首相が声明を発表しました。
この中でトルドー首相は「私たちが優先すべきは透明性や正義の精神に基づいてこの問題に光を当てることだ。これは国家の悲劇であり、すべてのカナダ人が亡くなった方々への深い悲しみを感じている」としています。
そのうえで、「世界中のパートナーとともに徹底した調査が確実に行われるよう努めていく。カナダ政府はイラン当局の全面的な協力を期待している」と述べ、事故の原因究明に積極的に関わっていく考えを示しました。
イランが撃墜を認めるのに先立って、カナダのシャンパーニュ外相は10日記者会見し、犠牲者が出たイギリスやスウェーデンなど各国と合同チームを編成し、調査に当たる考えを示しました。
この中でシャンパーニュ外相は「優先事項は犠牲者の家族を支援することだ。できるかぎりのことをする」と述べ、遺族の支援に全力を尽くす方針を示しました。
またカナダ国籍の犠牲者に関して、これまで発表していた63人から57人に修正し、「状況は流動的だ」として引き続き確認を進めるとしています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、声明を発表し、「イラン政府が完全に罪を認めることを望む」としたうえで、遺族や航空会社の損害を補償し、ウクライナ政府に対して公式に謝罪するよう求めました。
さらに撃墜の責任を追及し、犠牲者の遺体を返還するよう求めたうえで、全容の解明に向けて今後もウクライナをはじめとする各国政府の調査に全面的に協力するよう要求しています。
ウクライナの市民の間ではウクライナ国際航空の撃墜の全容を解明するよう求める声が上がっています。
首都キエフの中心部でNHKのインタビューに応じた男性は「イランが罪を認めても、ウクライナ社会は永遠に苦しみ続けるだろう。死んだ人は戻ってこない」と話しました。
また女性の1人は「イランは航空会社と犠牲者、それにウクライナ政府に対して補償しなくてはならない」としてイラン政府を非難しました。
そのうえでイラン政府が当初、墜落の原因はウクライナ国際航空の旅客機の技術的なトラブルだとしたことについて「国際社会でウクライナは大きな信用を失った。すぐには回復されないだろう」と述べました。
今回の撃墜によってウクライナでは乗客2人、乗員9人の合わせて11人が死亡し、社会に大きな衝撃を与えました。
政府関係者はNHKの取材に対し、「イランが誤って撃墜したことを認め、謝罪の意を示したことで、少なくとも旅客機の墜落に関してはこれ以上、関係国間の緊張が高まることは考えにくい」と述べました。
外務省幹部はNHKの取材に対し、「イランが撃墜を認めたことは一歩前進であり、謝罪の意を示していることは当然の対応だ。今後はイランがさらなる調査や関係国とともに賠償などの手続きを進めていくことになると思うが、日本としてはしっかり見守っていきたい。それとともにイランを含め中東地域の情勢が安定するよう、引き続き外交努力を行っていきたい」と述べました。
イラン軍が誤ってウクライナ国際航空の旅客機を撃墜したと認めたことを受け、イランのロウハニ大統領はツイッターで、「人為的なミスによって発射されたミサイルが残念なことにウクライナの航空機の墜落と、176人の罪のない人たちの死を引き起こしてしまったことが分かった」と述べました。
そのうえで、「この悲劇と許されざるミスの原因を究明し、訴追するための捜査を続ける」として、関係者の責任を追及する意向を示しました。
そして、「イランはこの悲劇的なミスを深く遺憾に思っている。喪に服しているすべての遺族に祈りをささげ、心から哀悼の意を表したい」と述べました。
イランの最高指導者ハメネイ師が声明を発表し、「調査の結果、今回の航空機の事故で人為的な過ちが認められたことが報告され、この悲しい事故で人々が亡くなったことに衝撃を受けている」としたうえで、犠牲者の家族に深い哀悼の意を示しました。
そのうえでイラン軍に対して、今回の撃墜についての原因究明を指示するとともに、すべての関係機関に再発防止のためにあらゆる措置をとるよう指示したとしています。
アメリカ軍は今月3日、トランプ大統領の指示を受け、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官をイラクの首都バグダッドで殺害しました。
これに関連して、アメリカの複数のメディアは10日、政府関係者の話として、アメリカ軍が司令官殺害の同じ日にイエメンで革命防衛隊の別の幹部を殺害する作戦も実施していたと伝えました。
標的とされたのは、ソレイマニ司令官が率いていた精鋭部隊「コッズ部隊」の財務担当の幹部で、作戦は失敗したということですが、ワシントン・ポストは「司令官殺害はこれまで国民に説明されていたよりも規模の大きな作戦の一環だったことを示唆している」と指摘しています。
一方、トランプ大統領は10日、FOXニュースのインタビューで、ソレイマニ司令官が4つのアメリカ大使館をねらって攻撃を仕掛けようとしていたと主張しました。
トランプ大統領はこれまで司令官がイラクのアメリカ大使館の爆破を計画していたとしていましたが、野党・民主党やメディアからは脅威が本当に差し迫っていたのか疑問視する声が相次いでいて、トランプ大統領として改めて判断の正当性を強調するねらいがあるとみられます。
中東地域を管轄するアメリカ中央軍は10日、声明を発表し、9日にアラビア海の北部に展開していた駆逐艦「ファラガット」にロシア海軍の艦艇が異常接近したことを明らかにしました。
海軍の当局者によりますとロシア側は「ファラガット」が進路を変更するよう信号を送ったあとも進路を変えず、およそ54メートルの距離にまで接近したということで、声明で中央軍は「攻撃的な接近で衝突の危険を高める」としてロシアを強く非難しました。
アラビア海の北部にはイランの脅威に対応するため原子力空母「ハリー・トルーマン」が派遣されており、「ファラガット」も空母に随行する空母打撃群の一隻として現場海域に展開していました。
イランと良好な関係にあるロシアは先月末に、イランと中国の海軍とオマーン湾などで合同軍事演習を行うなど、イランへの圧力を強めるアメリカへのけん制を強めています。
これについてロシア国防省は10日声明を発表し、「ロシア軍の艦船が進もうとする航路をアメリカ軍の駆逐艦がさえぎった。国際ルールに違反しているのはアメリカのほうだ」と反論しました。
シリアではロシアの支援を受けたアサド政権が国土の多くを取り返し、隣国トルコが支援する反政府勢力の最後の拠点である北西部、イドリブ県への攻勢を強めています。
国連によりますと、戦闘の激化で先月中旬からこれまでに少なくとも30万人が家を追われて避難民となり、冬の寒さに苦しんでいるということです。
こうした状況の中、トルコ国防省は10日、ロシアとの合意に基づき、現地時間の12日午前0時すぎからイドリブ県でそれぞれの勢力の間で停戦が実施されると発表しました。
トルコはシリアからすでに370万人の難民を受け入れていて、これ以上の新たな受け入れは困難だとしていて、今回停戦が実現すれば国境に避難民が押し寄せる流れをひとまず止めることができそうですが、イドリブ県をめぐる停戦はこれまで長続きしておらず、先行きは予断を許さない状況です。
派遣されるのは海上自衛隊那覇航空基地のP3C哨戒機2機です。哨戒機はアフリカ・ソマリア沖で海賊対策の活動をしている部隊と交代するために派遣され、先月、閣議決定された中東地域への自衛隊派遣に基づき、今回から新たに日本に関係する船の安全確保に必要な情報収集が任務に加わります。
那覇航空基地で11日、出発式が行われ、派遣部隊の指揮官を務める稲生修一2等海佐が河野防衛大臣に対し出発を報告しました。そして派遣される隊員は見送りに来た家族とことばを交わしたあと、哨戒機に乗り込みました。
哨戒機の部隊は隊員約60人で編成され、アフリカ東部のジブチを拠点にソマリア沖のアデン湾などの上空で情報収集に当たります。
防衛省関係者によりますと、特に船の位置などを知らせるAISと呼ばれるシステムを切ったまま航行するなど、不審な動きをする船について、種類や進路などの情報を収集するということです。
哨戒機の部隊は今月20日から活動を始める予定で、来月2日には護衛艦1隻も現地に向けて出港し、来月下旬からオマーン湾などで活動を始める予定です。
派遣される哨戒機の部隊の指揮官を務める稲生修一2等海佐は「現地で予想されるあらゆる事態に対応するための教育訓練を実施してきた。中東情勢の変化については承知しているので、これまで以上に緊張感を持って情勢の把握に努めつつ、安全を確保しながら任務を完遂したい」と述べました。
また今回から情報収集活動が任務に加わることについて「いかなる任務を付与されようとも、与えられた権限をしっかりと理解しつつ、できること、できないことをしっかりと切り分けて、任務にあたる」と述べました。
河野防衛大臣は「日本関係船舶の航行の安全確保は重要だ」と訓示し、現地に向かう哨戒機を見送りました。
中東情勢の緊張が続く中、自衛隊の護衛艦1隻と哨戒機2機の派遣を命令した河野防衛大臣は11日午前、沖縄県の海上自衛隊那覇航空基地で、現地に向けて出発するP3C哨戒機2機の出発に立ち会いました。
出発に先立って、河野大臣は派遣部隊の自衛隊員に対し、「主要なエネルギーの供給源である中東地域において、日本関係船舶の航行の安全を確保することは非常に重要だ。勇気と誇りを持って任務に精励してください」と訓示しました。
河野大臣は記者団に対し、「わが国独自の取り組みとして情報収集活動を実施する初めての部隊となる。関係各国から否定的な反応は全くなく、安心して送り出すことができる。立派に任務を完遂してくれると確信している」と述べました。
また部隊が海外で一定期間、活動することから、毎日、活動内容を報告するよう指示したことを明らかにしました。
哨戒機の部隊に続き、護衛艦の部隊も来月の出港に向けて詰めの準備を進めています。
派遣されるのは海上自衛隊横須賀基地に配備されている護衛艦「たかなみ」で、部隊は1等海佐の護衛隊司令を指揮官に、隊員約200人で編成されます。
来月2日の出港までの約3週間、今月8日と9日に幹部が参加して行われた図上演習を踏まえて、不測の事態に備えた状況判断や対応の手順の確認を繰り返すということです。
また海上自衛隊は、隊員の家族を対象とした説明会を開き、派遣中の連絡方法や相談の窓口など家族への支援体制を説明して不安を解消するとともに、派遣への理解を得たい考えです。
オマーンの国営メディアは11日、カブース国王が10日夕方に79歳で亡くなったと伝えました。カブース国王は1970年の即位以降、半世紀近くもの間、首相や外相それに国防相などを兼任して絶対的な権力を維持し、アラブ湾岸諸国の首脳の中で重鎮と位置づけられてきました。
外交面ではほかのアラブ湾岸諸国がペルシャ湾の対岸のイランを脅威と見なす中、中立的な立場からイランとも良好な関係を保ち、イラン核合意では当時のアメリカのオバマ政権との間で交渉の調整役を担ったとされています。
さらにおととしにはアラブ諸国と対立するイスラエルのネタニヤフ首相の異例の極秘訪問を受け入れ、パレスチナ問題をはじめ地域の安定化に向けて意見を交わして存在感を発揮してきました。
国営メディアはカブース国王の後継者として、いとこのハイサム遺産文化相が選ばれたと伝えています。
中東ではイランとサウジアラビアなどのアラブ湾岸諸国の間の緊張が続いていて、新しい国王が独自の外交路線を引き継ぎ、今後もオマーンが中東の貴重な橋渡し役となるか注目されています。
安倍総理大臣は「カブース国王の崩御の報に接し、深い悲しみを禁じえない。謹んで哀悼の意を表する。国王は中東地域の平和と安定のために多大な貢献をされ、世界各国から深い尊敬を集めた指導者だった。国王の崩御は国際社会にとって大きな損失であり、オマーン国民の皆様がこの深い悲しみを乗り越えるにあたり、日本は常にオマーンと共にある」という談話を発表しました。
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