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『無門関提唱』
P234

 そういうわけであるから大力量の人になればなるほど、身を処するに、窮屈な生活をしていかねばならん。そうしなければ人間の世界が治らんから勝手次第なことはできない。
 ここにおいて大力量の人、世界を一目に見て、全世界を眼下に置いて、頭を低れて俯して視る四禅天。頭を上げて上を見るのじゃない。頭を低れて見るのである。全宇宙の上に立つて、全宇宙の底に立つていかないとほんとうの仕事はできん。会社などに勤めて、どんな下の役を勤めておつても、ちやんと上の人の意図と仕事の急所を心得る。また上におる人も下の人の仕事をよく見ていかにやいかん。下ばつかり見て上を見んとおつたらほんとうの仕事はできん。上ばつかり見て下を見んとおつたら、それこそおへつらい者みたいになつてしまう。上もよく承知し、下もよく承知して、そうしてそこで脚を擡げ起す、これが大力量の人じや。
 日本の今のありさまはどうなつておるか。日本人は今はお互に辛抱せんならん。上に立つ人も中に働く者も下に使われる者もそこをよくお互に承知し合うていくならば、日本の再興などは何でもなくできる。それじやから『一箇の渾身著くるに処無し』物に執着することなしに渾身、ぐあいよくそこを円滑に舵を取つて働いていくのである。さあ、ここで『請う一句を続げ』ここにいる皆の衆よ。どういう思いをしておるか、自分の見識はどうじやな。一句をいうてみよと、こういつた。世の中は自由になるものでない。そこを自由に働いて、人間の世界を思う通りにやつていけるようにする。これはめいめいの自性がほんとうにわかつてくると、屁の河童じや。