『人物を創る』
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第一次大戦後ドイツの復興に大いなる役割を果たした、シャハトという国立銀行の総裁、彼がどうしてあの紙屑のようになったマルクの国、ドイツの財政を立て直したかというと、あの人は元来銀行家などになろうとは自分では思ってなかった人で、その伝記を読んで非常に感じたが、彼は学生の頃は哲学や文学ばかりやっていた。それが思いがけなく銀行家となって大成功をしたのですが、彼の告白するところによると、「自分は金をどうするとか、利子をどうするとかいうような、そんなけちなことは考えない。経済はやはり道徳だ、すぐれた心の持ち方や美しい感情、情操を養うことが生産を上げ、経済を済うことになる」という道徳経済論をやっている。
あのケインズなんかもそうです。ケインズの絶筆「わが若き日の記念」の中に「我々にはIt is much more important how to be rather than how to do.(如何になすべきかということよりは、如何にあるべきかということが大事だ)」といっている。