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検証・日銀人事:首相、甘すぎた独り相撲

 小沢氏の電話は、言外に「予算案の採決日で政府側が譲れば、日銀総裁人事では政府の武藤敏郎総裁案で民主党内をまとめる」ことを示唆していた。

 しかし、伊吹文明自民党幹事長から「年度内成立の担保がない」とクギを刺されていた首相は「それはできません」と断る。それでも武藤案に支持は得られると踏んだのだ。

首相は武藤案を参院に提示する前、小沢氏に電話を入れて協力を求めたが、小沢氏は言葉少なに電話を切った。

 それ以降、2人のホットラインは機能停止に陥る。

1月18日、民主党藤井裕久税調会長は日銀の三重野康元総裁から示された案を小沢氏に内々に紹介した。

 小沢氏は「我々が政権を取る時に財務省を敵に回すのがいいのかどうか」と第1案に理解を示したが、国会運営がままならず、党内権力維持を優先せざるを得なくなった。

 小沢氏を信用しハシゴを外されたてんまつは、大連立の失敗と驚くほど似ている。

 財務省幹部によると、首相に「田波総裁案」を勧めたのは保田博元大蔵次官。約30年前、旧大蔵省出向の福田赳夫首相秘書官で、政務秘書官だった首相と1年間机を並べた「家族同様の関係」(同省OB)だ。田波氏は、「官房長−秘書課長」「主計局長−局次長」などでコンビを組んだ後輩に当たる。

驚いた田波氏は、即答できずに電話を切った。

 ドタバタ劇の小道具は、いずれも携帯電話だが、便利さの割に、政治工作での成功率は決して高くない。

 一連の混乱は、財務省が自らの地盤沈下を認識できていなかったことも大きい。

福田首相財務省、政治情勢と世の中の目の間で、幾重にも複雑にずれており、その首相と財務省は、そろってその断層に落ち込んだ。