「大統領のパワーとは、説得する力である」と初めて定義したのは、ハーバード大教授だった故リチャード・ニュースタット氏である。ニュースタット氏は議会の同意なしには政策を実行できない米国政治の特徴をとらえて、大統領の力は現実には相当弱く、そのパワーはワシントン政界での評判や個人的な説得力、国民の人気などに負っている部分が大きいと分析し、「プレジデンシャル・パワー」を著した。
その本は立候補前だった故ジョン・F・ケネディ元大統領の目に留まり、ニュースタット氏は、ケネディ氏の戦略顧問に招かれ、後にハーバード大のケネディ・スクールを創設した。
ケネディ氏以来、米国では、政策を分かりやすく有権者に説明し実行する能力の有無が大統領の資質の中心と見なされ、候補者は一生懸命その能力を磨き、有権者は真剣に候補者の言葉に耳を傾けるようになった。