「新興国救済のための新融資制度」提案でヒットを飛ばした日本の財務省の真意|辻広雅文 プリズム+one|ダイヤモンド・オンライン
日本政府は11月10日のG7で、「国際金融安定化のためのIMF緊急ファシリテイ構想」を提案した。日本が潤沢な外貨準備金を、中国や産油国とともにIMF(国際通貨基金)に貸付ける。その資金をIFMが世界的金融危機に翻弄される中小国、新興市場国に融資する、という新ファンド構想だ。発案したのは、むろん財務省である。
財務省の別の意図
IMFへの融資原資は、外国為替資金特別会計である。外為特会の外貨準備高1兆ドル弱(約100兆円)とその金利収入は、昨今、“日本版政府系ファンド”の原資や、さまざまな政策財源に振替可能な”埋蔵金”として、政治的な注目を浴びてきた。
政治的思惑に左右されない、国内外の支持を得ることのできる使途はないか、と財務省は考えていたのだろう。
一方で、複数の関係者によれば、現在の財務省は、1兆ドルまで膨れ上がった外為特会を、巨額すぎると考えている。減らしていく方法はないかと密かに模索している、という。
一つは、一方的な為替リスクを負っていることにある。ドル資産ばかりなのだから、円高ドル安が進めば含み損は拡大していく。
もう一つは、円安維持のために、円売りドル買い一辺倒で1兆ドルもの外貨を溜め込んだ、過去の為替介入の姿勢そのものに対する見直しである。「円を一定水準に保つのなら、両方の介入を行ってしかるべきだった」という関係者の反省は、通貨政策の転換を視野に入れているように聞こえる。つまり、日本の経済政策の中心にあった円安政策の転換である。
別の表現をすれば、通貨が強くなれば、交易条件が良くなり(輸入価格が下がる)、資産効果は増す。つまり、輸出中心経済から、内需中心経済への転換を図らざるを得ないときがきた、と通貨当局は思い定めたのかもしれない。