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宮田秀明の「経営の設計学」世界最速を支えるチームマネジメント 日本グランプリの現場で見たF1チームの経営(2)

 どんなにつらくても、もっと先のレースのため、来年のレースのために開発チーム、テストチームへのフィードバックを行い、強い連係を保ち続けなければならない。

ビジョンと目的を共有してお互いに影響し合い、全員が日々の活動を高めることが必要なのだ。末端にいるエンジニアもハイテンションでなくてはならない。

シモンズ: 確かに運転は感覚的で直感的なものである。コーナーに差し掛かるとドライバーは直感的にスピードを落としステアリングを切る。そしてコーナーに入ってからのドライビングはとても感覚的だ。一方のエンジニアは常に数字をもとに考えるもので、とても異なるものだ。難しいのはドライバーとエンジニアのギャップを埋めていくことにある。

 「アンダーステア」と言ってもドライバーによってその意味する程度も違うし、極端に言えば「グリップがない」などとドライバーは言うが、実際グリップなしでは車は走れるはずがないのであり得ないことだが、感覚としてはそのように感じているものなのだ。そこで、そうしたギャップを埋めるために、一つひとつのことを1から5の段階に置き換えて考えている。そしてなるべくその段階の区分けを共通するように揃えている。また双方の「違う言語」を通訳して取り持つ立場の人間が大切である。

シモンズ: 英国の開発チームは約500人、テストチームは開発の半分くらいで、レースで転戦しているレースチームは 100人ぐらいだ。それぞれがインタラクティブであり、エンゲージしていることが肝要である。最前線にいるレースチームも、カーボンファイバーを積層してボディを製造しているエンジニアも、それぞれの役割にエンゲージしていることが大切だ。そういったことで工場から最終ラインまで、緊密にコミュニケーションを取らなければならない。

 そのために、私は日曜日のレース後の火曜日には工場の全員を集めて話し合いを持っている。レースの様子や問題点などを共有するためだ。話しづらいことももちろんあるが、なるべく率直にいろいろなことを伝えている。そしてどんな質問でも受け付けている。そういったことも人々のエンゲージを高めることに繋がっていると思う。

―― チーム全体の中で、どのようにハーモニーを作り出していますか?

シモンズ: いろいろな方法を取っているが、まず人々にエンパワー(権限委譲)することだ。私に言われたからやっている、ではなく自らの仕事を自覚してほしい。少なくとも、なぜそれをするように言われているかを理解してもらうことだ。

 自分のスタイルとして、事細かな指示を出して人にそれをやらせるのではなく、それぞれに考えて行動し、いろいろなアイデアを出させるようにしている。一人ひとりのInvolvement、仕事への関わり方が大切であるし、それぞれの役割を理解し合っていることも大切だ。そしてチーム全体がどこへ行こうとしているのか、なぜそうしているのかを皆が理解していることも絶対的に必要だ。

 ルノーは、マクラーレンフェラーリトロロッソ、フォースインディアなどとは違うやり方をしている。他のチームとは違う考えを持って、自ら信じる道を進んでいる。そこにチームの一人ひとりが関わっていくことが大切だと考えている。