御立尚資の「経営レンズ箱」世界的デフレか、それとも価格“正常”化か
現在の欧米でのデフレ論は、もやもやしたとらえどころのない議論になっているのが興味深い。何と言っても、経済学の教科書に出てくるデフレと、今後起こり得るデフレとのギャップが大きすぎ、デフレがどういう事象なのか、具体的なイメージがわかないのだ。
日本の場合も、それまでの経済史で取り上げられるデフレと、90年代に進行していたデフレとは全く違っていた。バブル崩壊以前、近代日本では、3回のデフレがあったとされる。西南戦争後の「松方デフレ」、昭和初期の「井上デフレ」、第2次大戦終戦後の「ドッジデフレ」だ。
これらは共通して、その当時の政策責任者がインフレ対策として強烈な緊縮政策を取ったことが引き金となったデフレであり、かつ物価低下のレベルは半端なものではなかった。
バブル崩壊後のデフレは、言うまでもなく「インフレ対応のための超緊縮政策」が原因となったわけではない。
第1の要因は、需給ギャップ。
さらに、第2の要因として、「価格の正常化(ノーマライゼーション)」という流れがある。
多くのユーザーは「本当に必要なものを、できるだけ安い価格で買う」という行動に出る。そして、企業間の競争、イノベーションの進展、そして、低コスト生産を可能にする新興工業国の存在が、この流れを加速化する。