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【竹中平蔵 ポリシー・ウオッチ】歪む政府介入

これがすべて実現したとしてもマクロの財政刺激はGDP比2%程度と考えられている。アメリカはGDP比4〜5%の刺激策を行い、中国が同じく5%程度の刺激策を行う中で、日本の対応はいかにも小さく遅い。

昨年10〜12月期の成長率を確認したうえで、目下審議されている21年度本予算案を直ちに修正するくらいの覚悟が必要なのではないか。

 金融政策でも、昨年のマネーサプライ伸び率はアメリカ9%、ユーロ圏8%に対し、日本はわずか1・8%である。

 日銀がこのような姿勢を崩さないから、一部で政府紙幣を発行せよという話も生まれてくる。

 このように、マクロ経済運営という政府の中心的課題について、現政権の取り組みは非常に弱い。景気対策を看板に掲げながら、その中身はあまりに空虚だ。そうしたなかでいま、非金融機関(事業会社)への公的資金活用という政府介入の動きが生まれてきた。

10年前の金融危機の時代、政策投資銀行を活用してダイエーなどに対する融資・出資が行われた。これは結果的に誤った救済であり、融資をいくら重ねても業況は改善せず失敗に終わった。結局ダイエーは、産業再生機構によって再生へと向かうことになった。

 政策投資銀行の視点から見ても、同行を活用した安易な救済は大きな問題を残す。

下手をすればこうした行為は、「民営化つぶし」になるのである。

 基本は、存立できない企業は破綻(はたん)させること。ただし可能な限り清算型破綻ではなく再生型破綻にし、コアビジネスへの特化と雇用の維持を図ることである。これを秩序立てて行う、混乱を避けて進める役割を、かつての産業再生機構は果たした。日米ともこうしたいわば「管理された破綻」こそが必要であり、政府による安易な企業救済は必ず失敗するし、一方で著しいモラルハザードを招く。