濱口や井上は、金解禁や財政再建とともに重要視していたのは、産業の構造改革であった。明治以来の政府(官僚・軍部)と政商・財閥のもたれ合いの上に発達を遂げた日本の産業の国際競争力は決して強いものとは言えなかった。特に第1次世界大戦後の不況の長期化はこうした日本経済の悪い体質にあると考えた濱口や井上は金解禁によるデフレと財政緊縮によって一時的に経済が悪化しても問題企業の整理と経営合理化による国際競争力の向上と金本位制が持つ通貨価値と為替相場の安定機能や国際収支の均衡機能によって景気は確実に回復するはずであると考えたのである。
ところが、この少し前の10月24日ニューヨーク株式市場(ウォール街)の株価大暴落(「暗黒の木曜日」)が発生してアメリカ経済は大混乱に陥っていた。これが後の世界恐慌のきっかけになるが、当初日本国内ではその影響について意見がまちまちであった。
金本位制には、国際収支を均衡させる効果があると考えられている。