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『東洋学発掘』
P122

シュンペーターの告白
オーストリアの世界的経済学者で、大蔵大臣やエジプトの財政顧問などもして日本にもよく知られたシュンペーター教授が、私は今までいつも誤った認識をした。人間であるかぎり、これは避けられない。しかしただ一つ私に容すことの出来ない誤信があった。私はかつて社会主義者は政治家としても、他の政治家とは異なり、一般に高い人格教養を具え、その政治にも、文化人の政治として恥かしくない洗練味があり得ると思っていた。ところが現実の体験は私のこの期待を裏切り、私の誤信を容すことの出来ないものにした――と語り、教授がドイツの社会主義者に言及して、彼等が官界の座り心地の好い安楽椅子の中に安易な自尊心を以て腰を下した姿を慨嘆した話を聞いたことがありましたが、これはどの国でも変らぬことです。戦後の日本の狂乱ぶりを見ても、もはやいかなる愚者も単なるイデオロギーや組織制度の改廃ぐらいで日本が救われようなどとは信じられないでしょう。
 要するに人々が己一人を無力なもの「ごまめの歯ぎしり」とは思わず、いかに自分の存在が些細なものであっても、それは普く人々――社会に連関していることを体認して、まず自ら善くし、また自己の周囲を善くし、荒涼たる世間の砂漠の一隅に緑のオアシスを作ることであります。家庭に好い家風を作り、職場に好い風気を作れぬような人間共が集まって、どうして幸福を人類に実現など出来ましょうか。

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