【時々、すっぴん】大阪・文化部 亀岡典子 プラスアルファの何か
入門12年目の若手に勤まるような曲ではない。それなのに肌があわ立つような感動があった。これはいったい、どういうことなのだろう。
取材をしながらたびたび感じることだが、芸というのは不思議なもので、演者に演技力があるから感動するというものではない。テクニックは基盤だが、そこにプラスアルファの何かが加わったとき、見る人の心を深いところで揺さぶる感動が生まれるのではないだろうか。
相子大夫さんの修業は文楽という豊かな時間の流れの中ではまだ入り口にすぎない。しかし、なんでも“促成栽培”のいまの世の中で、じっくり時間をかけて修業し、自身の内面を磨き上げてゆく作業が芸に結実してゆく仕事は幸せではなかろうか。