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【幕末から学ぶ現在(いま)】東大教授・山内昌之 成島柳北

 しかし、奥儒者から出た成島柳北大隅守)はただの一度も薩長政権に頭を下げず、「無用の人」と自称して終わった。欧米旅行後、『朝野(ちょうや)新聞』などを舞台に敢然と新政府を批判し続け、時には投獄されても、監獄の内情を暴露するなど文筆家としてのしたたかさを示した。

しかも、ただの硬骨漢だったわけでない。

芸を捨て、醜悪な色の世界に変貌(へんぼう)を遂げた花街の風俗を描きながら、薩長の成り上がり者の野暮(やぼ)な生態をひそかに皮肉った。

 しかし同時に、柳北は蒸気機関車の利便と迅速に象徴される新文明の画期的性格を見抜いてもいた。

 柳北は、明治新政府の改革事業を評価する素直さをもっており、宇宙への夢まで想像できるスケールの持ち主でもあった。

しかし、理論や理想だけではうまくいかないナマの政治を捌(さば)く職業の経験知として、「政治原論」「政治大全」をまとめる可能性は現代の政治家にも残っている。