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『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』を書いた吉川洋氏に聞く――二人の唱える経済学は水と油ではありません《09年上期ベスト経済書1位》(1) | 書評 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン

 ケインズは「需要が経済の状態を決める」と主張しています。たとえば、去年の10〜12月になぜ、あれだけ経済が落ち込み、今年の4〜6月はプラス成長になったかは、ほぼ100%ケインズ有効需要の原理で説明できます。だから、短期の経済ではやはりケインズが正しい。


 では、中長期はどうか。ケインズの考え方は中長期でも重要というのが私の考えです。たとえば、供給面を重視する新古典派では、製品の価格は一定で、需要はいくらでもあると仮定しています。ただ、経済全体を見ると、つくった分だけ物が売れるという企業は例外的で、むしろ「需要がないからつくらない」というのが現実に近い。つまり、中長期にも、需要制約がある。そこで登場するのが、シュンペーターのキーワードであるイノベーションです。


 中長期の経済成長にとって、いちばん大きな障害になるのは、既存の物やサービスに対する需要の頭打ちです。これは今、先進国経済における有効需要不足の根本原因です。


 仮に日本経済が電気洗濯機しかつくれない経済だとします。すると、1台洗濯機を買えば、当分の間2台目は必要ないので、需要が不足してゼロ成長になってしまいます。それを打ち破るのは、新しい物やマーケットを生み出すイノベーションです。イノベーションこそが、中長期的な需要を生み出すという点で、ケインズシュンペーターの経済学がつながるわけです。

 その意味で、イノベーションを滞らせる要素を取り除くことが構造改革と定義すれば、小泉首相が掲げた「構造改革なくして成長なし」というフレーズは正しかったと思います。私自身、小泉内閣下の経済財政諮問会議のメンバーの一人で、当時は「吉川はケインズ派からシュンペーター派に鞍替えした」と非難されましたが、構造改革支持はケインズ経済学と矛盾するものではありません。

 ――シュンペーターは起業家について印象的な言葉を残しています。


 彼は、イノベーションとは、何が何でも俺はこれをやりたいという、まさに荒野の呼び声みたいなもので、金儲けを最優先に考え始めたら、イノベーターの死だと言っています。


 ほかにも彼は「イノベーションに大事なのは家族。イノベーション衰退の兆候は少子化に現れる」と言っています。家族、一族のためという一個人を超えた衝動こそが、イノベーションの源泉であり、自らの効用だけを考え始めたら、イノベーションがおしまいになる、と。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080317#1205745844ケインズ
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090218#1234949255シュンペーター
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