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日本の未来が見える村 長野県下條村、出生率「2.04」の必然

 出生率を上げるには若い夫婦を呼び寄せればいい。そして、彼らが安心して子供を育てられる環境を提供すればいい。下條村が示しているのは簡単な事実だ。ならば、「ほかの自治体も子育て支援を充実させればいいではないか」と誰もが思うだろう。だが、借金にまみれた市町村は独自の政策を打てるほどの財政的な余力がない。やりたくてもやれない――。それが多くの自治体の本音だ。

 最初に取り組んだのは財務体質の強化だった。どんな政策を打とうにも、十分な予算がなければ何もできない。ただ、いきなり歳入を増やすことは難しい。ならば、支出をカットすることで自由に使える予算を捻出しようと考えた。そして、実行したのが職員の意識改革である。

 「補助金」「地方債」「交付税」。この3つを行政関係者は「地獄の3点セット」と呼ぶ。インフラ整備やハコ物事業を進める場合、国や県から半分程度の補助金が出る。さらに、足りない分は地方債の発行が認められ、その元利返済は地方交付税で面倒を見てもらえた――。この3点セットは市町村が借金の痛みを感じることなく、借金を積み重ねることになる原因になった。


 90年代半ば以降、景気対策公共投資が頻繁に繰り広げられるようになると、国の政策誘導として3点セットが使われたこともあり、自治体は膨大な借金の山を積み上げた。経常収支比率が上昇し、自由に使えるカネが少ない市町村が増えたのは、3点セットの公共投資で借金を積み上げたため。それに対して、下條村は無謀なインフラ整備をしなかった。

 役場の職員の目の色が変わった――。村長2年目に入ると、役場の意識改革を村民も直に感じ始めた。「職員もよくやっているじゃないか」。こうした声が出始めるのを確認すると、伊藤村長は村民に1つの提案をした。「皆さんも知恵を出して汗をかいてください」と。

 財源の捻出、行政サービスの明確化、地域コミュニティーの活用。ここまで実現した伊藤村長は、いよいよ公約である“村民倍増計画”を実行に移した。まず手をつけたのは村営住宅の建設。安価な賃貸住宅を提供し、若者の定住促進を図るためだ。

だが、国の補助金を使うと、この目的を達成できないことが分かった。

 これまでの経緯を見ても分かる通り、出生率が増えたのは表面に見える1つの結果に過ぎない。奇跡ではなく必然。そこに至る過程こそ、今の国と地方が考えなければならないことだ。そして、この過程には、今後の国造りを考えるための多くの示唆が含まれている。

 地域のニーズを知っているのは住民に身近な市町村だ。出生率を上げた下條村を見ても分かるように、住民の生活に直結したサービスに関して言えば、少なくとも市町村の方がカネをうまく使う。これは子育てだけの話ではない。

 だが、天竜川を挟んだ泰阜(やすおか)村は事情がまるで違う。

 下條村泰阜村。隣同士の村だが、住民が求めているニーズは違う。そして、村民のニーズに沿って、どちらの自治体も乏しい財源をうまく使っている。非効率な補助金はやめ、市町村に財源を渡し、住民のニーズに合った政策を実行させる――。その方が費用対効果は向上し、住民のためにもなる。

 奇跡の村の物語。ここから見えるのは、地方分権を進めることが、いかに効果の高い政策に結びつくかということだ。意味のない補助金をやめ、住民に密着するサービスの提供を市町村に移譲する。そして、市町村は生産性の向上を進め、コミュニティーの力を活用して豊かな生活を送るためのサービスを提供していく。下條村が示しているのは、この当たり前の事実だ。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20091009#1255062123
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090904#1252059127
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090810#1249854216