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【日航再建】専門家チーム会見詳報(1)高木氏「最後で最大のチャンス」

 「しかし、当時は支援機構はなかったので、その予定を変更した。11月1日から、もし私どもが指名されれば、(日航の)執行役員として金融機関や労働組合との交渉していくこと考えだったが、(支援機構に)バトンタッチする。私どもは本日をもって終了する」

 冨山氏「(日航の)現状は非常に厳しい。従って当座の資金調達など、いくつかの山を越えないといけない。長いレンジで考えると、この会社は大変な改善の余地があり、まだまだ成長力もある。この会社の中で働いている人たちは世代が若いほど、厳しい待遇条件の中、非常に高いモラル、モチベーションで働いている」

 「どうやったら潜在力を発揮できるのか。いわゆるレガシーコスト負の遺産)は、いろんな過去の出来事が財務面、組織面、経営体質においてもある。これを断ち切らないと、潜在力を発揮できないのは事実だ。たとえば、事業戦略的には3つの過剰がある。1つは『機材』。つまりは航空機だが、大きく古い機材が多い。それから『路線』。もうひとつは『組織』。3つが別々の問題ではなく、三位一体の構造になっている。徹底的にやらないといけない」

 「レガシーコストの問題だが、年金債務、増殖した子会社関連会社問題とか多々ある。こういった問題を乗り越えるのは大変だ。限られた時間で相当に腹をくくって集中的にやらないと、病巣を取り残すことになる。この会社の危機はひとつ間違えると会社がなくなる。中の人がよく分かっている。レガシーコストと決別する最後で最大のチャンスだ。もし機構が支援決定に至るのであれば、日航も不退転の決意で、ぜひ体を張って命をかけてやり抜いてほしい。ここを乗り越えれば、事業面での潜在力はすばらしい。経験と見識、訓練を受けた戦略つくるプロが中に入って、彼らと一緒に考えればおそらく同じ感触を持つだろう」

 「もう1点。不連続を作ることが大事だ。重要なのは経営の問題。レガシーコストは目にみえる問題だけでなく、組織や心の中にもある。どうしてもこの会社の経営体質は、ある種の“お上”志向がある。あるいは内向き志向というか。もう一つは先送り体質。苦労した分、軋轢(あつれき)の起こる部分や、ややこしい問題についてはふたする所がある」

世代が若くなるほど、そういうもの(経営体質)から自由になっている。50歳前後から40歳代の若い人にはいい人材がいる。

【日航再建】専門家チーム会見詳報(2)冨山氏「多額の再建資金を担保できるのは機構」

 高木氏「債務超過か否かは、数字を申し上げられないことになっている。ご勘弁を。いずれ知ることになるが、われわれの口から本日言えない」

 「2点目は、国際的な信用取引を多くやってる会社で、お客さん商売ということもあり、法的整理は必要ないと判断した。そんなこと(法的整理)しなくても再生できる。もう一つの理由は、(支援機構が)出融資の機能を持っていることが決め手になった。リスクマネー出せる所は限られている」

 冨山氏「(法的整理について)有価証券報告書では、かなり前から日航は営業キャッシュフロー(現金収支)がマイナスになっている。相当程度の運転資金を調達しないといけない。細かいこというと、上空飛ぶためにもデポジット(保証金)を積まないといけない。燃料を買うのにも信用取引だ。買い掛け3割とあるが、あれをほとんど現金で置き換えないといけなくなる」

 高木氏「米国でチャプター・イレブン(日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条)をやったが、労働協約改定のためだった。だから信用不安は起きなかった。(今回の日航は)大変な資金を用意してからじゃないとできない」

 冨山氏「われわれの理解では、(産業再生法は)金融危機という外部的環境の激変要因で経営状況が悪化した場合に使う。そういう状況下で、適合性を考えれば、支援機構の方がいいと判断した。産業再生機構型なので、課題はお金と強力なガバナンスという2つの要素だ。そう考えると支援機構が有力な選択肢だ」

高木氏「私どもは一銭ももらっていない」

【日航再建】専門家チーム会見詳報(3完)高木氏「時間を無駄にしたのではない!」

 冨山氏「一般論では、企業体として維持していかなければ、そもそも運行が止まる可能性すらある。ライフラインとして飛ばさないといけない場合、公的補助という形での運航は私見だが、ありではないか。個別路線への言及は差し控える」

 冨山氏「バランスシートを調整してまとまった資金を入れるからこそ、ダウンサイジングをスピーディーにできる。今回の案は日航の持ち物だ。これを支援機構がどういう風に活用されるかだ。ただ、ここで再建計画の詳細な数字を申し上げると、(支援機構の)後輩たちに対し、予断を与えることになる。プロフェッショナルの倫理としてそれはできない」

 高木氏「詳しい処方箋(せん)は書いた。いま特別立法の話が出ている。日航の食堂で会った31歳で7年目の社員によると、手取りは19万何千円と言っていた。ところが、退職者の年金受給者は何十万円ももらっている。ここを直すのは大変。政府は本気になって、検証中のようだ。われわれは違法者じゃないので、現行法の範囲内で(年金削減について)最大限のことを考えた」

 冨山氏「いま考えているのは正々堂々と年金債務について、いま穴が開いている(退職給付債務の積み立て不足の)部分を埋めることだ」


 −−それは結局、公的資金が年金に流れることを意味するのではないか


 冨山氏「現行法の枠組みでやっている。法的整理にしてもコスト、リスクの問題がある。結果的に破(は)綻(たん)するリスクもある。そこで生じる損害と年金(に投入する)金額は比較にならない。現行法の中でのギリギリの判断だ。そこを国民のみなさんがどう考えるかだろう」