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COLUMN-〔インサイト〕高まる無国籍通貨「ゴールド(金)」への関心、米金融政策が拍車=Mストラテジィ 亀井氏

今回の上昇の特徴は、静かな上値追いという点にある。しかもそれは過去に例を見ないといっていいだろう。9月初旬に1000ドル大台乗せ以降、上昇・下落ともに大幅な変動はまったく見られないのだ。史上最高値を7日連続で更新と聞いてだれもが抱く、熱狂相場とか過熱相場という様相が一切見られないという点で、前代未聞というか、逆に不気味さすら漂う展開となっている。

年始以降ここに至る金価格の上昇は、投資需要の記録的な増加によってもたらされてきた。1─3月期に見られた大手ヘッジファンドによる金ETFの集中買いに始まり、その後は世界的なスクラップ(金製品の売り戻し)のこれまた集中的な売りを継続的な投資マネーの流入が吸収するという経過をたどってきた。

その間にNYコメックスでは、ファンドによるネットの買い建て玉(ネット・ロング)が重量換算にして概ね500─600トンという高水準を維持してきた。先物市場での600トン近いネット・ロングは、これだけの規模の将来の売り要因を抱えていることを意味し、過去の経験則では内部要因からみて、これだけで十分な反落要因といえる規模である。

ところが、今回9月に至る価格展開は、この高水準のネットロングを抱えながら、比較的安定した900ドル台前半でのレンジ相場を繰り返してきた。既にこの段階で、従来相場との質的な違いを示していたのである。

投資需要急増の背景は、米国の金融政策とそれを映すドル安見通しである。米連邦準備理事会(FRB)によるゼロ金利政策と超ド級量的緩和策と、オバマ政権が採った史上最大の財政出動策を受け、過去最大に膨れ上がった財政赤字は、今後複数年にわたり記録的水準を続けるとみられる。

前回10月の寄稿に際し、金市場に投じられる「投機資金」とひとくくりに呼ばれる運用マネーに質的な変化が表れており、短期よりも中期的視点での金の取得の傾向が高まっているという指摘をした。
その1つの表れが先物市場(NYコメックス)におけるファンドの高水準の買い建て玉の維持であり、限月間の乗り換え(ロールオーバー)によりもたらされているとした。

一般に、実需を伴わない上昇相場は長続きしないというのが経験則の教えるところなのだが、それは投資需要が短期で売り戻すことを前提にしている。したがって価格水準のみを判断基準とした反落に対する警戒が先行することになる。
実際に9月に1000ドルを超えてからの展開は、常に警戒感を伴った上昇となっている。いわゆる活況に「沸く」という状況にはない。また、警戒するばかりに上昇相場に乗り遅れた投資家が多く、下げ局面を待つのだが思う水準までは下がらず、時間の経過とともに買い値を切り上げるという展開になっている。
一方で先行した投資家は、利益確定の売りを断続的に出すのだが、それらはこの「出遅れ組」が拾うという展開になっている。

繰り返しになるが年始以降、金価格上昇の原動力は金融市場からの資金流入にある。その本質は、ドルを中心にした低金利、カネ余りにある。ドル安を上昇のテコにしているのは「カネが余っている=通貨価値の劣化」だからこそ「基軸通貨ドルではなくゴールド(代替通貨)」という流れといえる。