職場で「人が育った20年前」と 「育たなくなった今」は何が違うのか | なぜ職場で人が育たなくなったのか | ダイヤモンド・オンライン
私は入社24年目の48歳。
あれから20年たって、いまは週刊ダイヤモンド編集部だけでなく、社内はどの部署も若者が多く、全体の印象として「オトナ」が少ないように感じられます。
長々と昔話を書いてきましたが、伝えたいのは、ヒトも職場も仕事道具も、この20年の間に様変わりしてしまった、という事実です。
ヒトを育てるということについて、方法論など考えずとも済んでいた時代が、かつてはあったように思います。家業から企業へ、職人技の世界からオートメーションの時代へと移っていく中で、仕事は複雑化し、断片化していきました。
そして、現状について考察します。若手が3年以内に辞めていく背景にはさまざまな要因があるはずですが、とくに「職場の学び」が変質し、あるいは有効性を失っている現状について考えてみたいと思います。
20年前の思い出を続けます。
配属されると入社年次で5年上の先輩記者が教育係としてつきました。取材の仕方、資料のあたりかた、タクシーの乗り方から酒の飲み方まで、あらゆることを教えてもらいました。
つくづく思うのですが、20年前は実に多くの先輩が私の指導に関わってくれていたものです。これは、雑誌編集の現場に限らず、多くの業種にあてはまるのではないか、と思います。
記者の場合、原稿という媒介物があるために、いやおうなくコミュニケーションが密になる、という特徴があります。毎週、必ず原稿を書き、それを素材に先輩や上司とコミュニケーションを図ることになります。書き直しプロセスが3、4回はありますから、それは濃密な付き合いになりますし、必然的に「内省(リフレクション)」を繰り返すことになります。
この連載では、「経験学習」という概念をひとつの核として展開することになります。ヒトは10年で熟達するというのが熟達化理論の定説ですが、私たちは松尾睦・神戸大学大学院教授との共同調査によって、ビジネスマンの場合、入社3年から5年で「一人前」になる、という知見を得ました。
その際、経験から学ぶ力の有無(高低)が成長力に関わることも、先行研究に加えて松尾教授の研究によって、明らかになっています。
そして、経験から学ぶために重要なのが、「内省」のプロセス。つまり、振り返りです。具体的な経験をしたあとで振り返りを行い、そこから引き出した教訓を新しい状況に応用する。これが「経験学習サイクル」で、これを回すことによって、ヒトは成長していきます。
いま、職場に内省の機会はどのぐらいあるでしょうか。また深い内省をおこなうために重要な周囲からの働きかけはどのぐらいあるでしょうか。