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財部誠一 日米の報道姿勢から読み解く「トヨタ問題」の本質

 リコールの原因を作ったのは2005年から09年まで社長とつとめた渡辺捷昭前社長の時代である。そこには章男内閣早期誕生を急かせた創業家の意向があったとトヨタの幹部が語っている。「章一郎さんの奥様、つまり章男さんの母親が自分の目の黒いうちに息子の社長就任を実現してほしいと強く願っていたことは、社内では周知の事実。だから渡辺政権は章男内閣誕生までのつなぎだという受け止め方が強かった」


 実際、マスメディアでも渡辺社長誕生に対して「章男内閣設立政権」などという揶揄がずいぶんとささやかれていた。渡辺前社長が御曹司への単なる「中継ぎ」ではないことを、業績拡大で立証したいと考えるのはごく自然のことだろう。実際、渡辺社長時代に、トヨタは米国内の生産拡大、販売拡大によってトヨタの絶頂期を築き上げた。


 しかしトヨタ幹部によれば「あまりにも急激な米国内での生産拡大に対して、章一郎さんがリスクを指摘していたことは間違いない」。


 その悪しき予感は自らの息子の社長就任後に現実のものとなってしまった。なんとも皮肉な結果になってしまった。

 だがこの最悪の展開は“担がれ上手”が本物の社長へと脱皮するためにはまたとない機会になったはずだ。天上人のような振る舞いをせず、周囲の愚かしい過保護を制して、章男社長が大トヨタにふさわしい大きなリーダーとなることを願う。