10年後、20年後に訪れるであろう電気自動車社会は、どのような社会だろうか。もっと将来予想図を描かなければならないのではないだろうか。
なぜなら、この社会を構成する主要な技術が大きく進歩しそうだからだ。リチウムイオン電池と電気自動車、充電設備に大きな技術革新が起きて、現在予想されている電気自動車社会よりも、もっと大きく飛躍した世界が広がっているかもしれない。
電気自動車を考えるうえで明瞭なのは、利用者が最も気にしているのが航続距離性能だということだ。ガソリン車では消費者がそれほど気にしなかった航続距離をファーストプライオリティーで設計しなければならない。あちらこちらで“電欠”して立ち往生する電気自動車が現れたのでは、電気自動車社会への進歩が大きく阻害されてしまう。
しかも航続距離は、車の状況や運転の仕方やエアコンの使用によって大きく変化する。先週のコラムでは、日産の小型車ベースの電気自動車に対して航続距離が色々な道路環境の変化でどのように変化するかを大雑把に試算してみた。日産からいただいたのは、公開された基本仕様のほかは一般的な消費馬力計算式だけだったので、色々な性能は私たちが憶測して行った。だから30%ぐらいの誤差があるかもしれない。
設計の作業とは、ファーストプライオリティーを大切にし、トレードオフを行いながらスパイラル状に繰り返す作業である。
充電器にも技術進歩がありそうだ。3分で50%充電できる充電器も開発中らしい。
しかし、忘れてはならないのは、電気自動車の航続性能と充電インフラまたは充電技術は表裏の関係にあるということだ。両方をまとめて最適化しなければ、電気自動車社会を作ることはできない。
もし電気自動車の実用的な航続距離が300キロを超えるとしたら、急速充電器の需要は急速に縮んで、充電ビジネスはほとんど意味がなくなってしまう。