今回の円高進行には幾つかの要因が重なっている。
米連邦準備理事会(FRB)が景気鈍化に対処するため量的金融緩和プログラムを拡大するかもしれないとの報道で、米国の金利は史上最低水準近くまで低下している。この結果、米国と日本の金利差は近年例のない幅に縮小、投資家が円を売ってドルを買う誘因が小さくなった。
また、中国が今年、円の保有を急速に増やしている。中国は2兆5000億ドルの外貨準備を保有しており、いわば世界最大の外為プレーヤー。日本政府の統計によると、中国は今年5月までに円を1兆7000億円ため込んだ。これは近年にみられない大規模な金額だ。中国が仮に外貨資産のわずか1%を円に振り向けただけでも、その規模は日本の月間経常収支黒字額に相当し、円の長期的な強さの大きな要因になる。
日本政府は、中国に通貨人民元を自由化させようとする米国の努力を支持しているからだ。そこで、円安誘導のため市場に介入すれば、為替相場を決めるのは市場であるべきだとの主張と矛盾してしまう。
一方、米国経済は最近のドル安の恩恵を受けている。ドル安は米製品の輸出価格を抑え、2015年までに輸出を倍増するとのオバマ大統領の目標に資するからだ。