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日銀追加緩和見送りの影響限定的、関心は米FOMCに

 予想より弱い結果になった7月の米雇用統計を受けて、関係者の関心はFOMCが買い入れたMBSの償還分の再投資など、追加政策を打ち出すかどうかに集中している。

 市場の関心はFOMCの結果に移っている。米景気に対する目線が徐々に下がる中、追加策として話題になっているのが、買い入れたMBSの償還分の再投資。しかし、バランスシートを拡大する形での追加のMBS買い入れや国債買い入れに踏み込んだり、逆に「長期間(for an extended period)」という時間軸表現の変更にとどめたりと選択肢は多様だ。

今回のFOMCで追加策を見送り9月のFOMCに向けて期待感を残す可能性もある一方、そもそも追加策を打ち出さない可能性もあり、市場の見方は定まっていない。

外為市場ではFOMCについては「追加策を打った場合と打たない場合、両方に備えたポジションを組んでいるようで、円プットの出合いなどもみられたようだ」(国内銀行)との声も出ていた。

 ただ、「MBSの再投資などが打ち出された場合、円は急騰する可能性がある。85円を割り込めば、円買いが加速する」(国内銀行)とみる声は多い。

 株式市場では、円の動向と米国株を通じてFOMCの影響が波及するとみられている。

〔Q+A〕FOMCで討議される可能性のある追加緩和策

 <FRBにどのような政策手段が残されているか>


 大恐慌以来最悪とされる景気の落ち込みを反転させ、金融システムを信用危機から救うため、FRBは2008年12月に政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に引き下げ、超低金利を「長期間」維持する方針を表明した。また、モーゲージ担保証券(MBS)と長期国債の買い入れを通じて金融機関に1兆7000億ドルの資金を供給した。


 しかしFRBにできることはまだあるとバーナンキFRB議長は述べている。FRBは、「長期間」低金利を維持するという文言を強めることができるほか、貸し出し促進のために超過準備預金に付与している金利を引き下げることや、満期を迎える保有証券の償還資金の再投資追加資産の購入も可能だ。


  <最初に実施される可能性が一番高い手段は> 


 トレーダーやエコノミストは、経済の低迷を反映する形での声明の文言変更も含め、FRBが早期に講じる措置はおおむね象徴的な意味合いを持つとみている。


 その他の取り組みやすい措置としては、現在0.25%の超過準備の金利の引き下げや、満期を迎えたMBSの償還資金を新たな証券に再投資することなどが挙げられる。


 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は景気支援のための米国債の追加買い入れを支持しているが、そうした措置は当面可能性が低いとみられいている。


 <緩和策にはどの程度の効果があるか>


 JPモルガン・チェース(ニューヨーク)のエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は、いかなる追加緩和措置であっても効果は限られると指摘。「投資家はFRBから何らかの措置を期待しているが、効果は恐らく大半の投資家の認識より、ずっと限られるだろう」と述べた。
 短期金利がゼロに接近しているだけでなく、米国債2年物利回りもも0.5%前後で、10年物利回りは2%をわずかに上回る水準にある。利回りをさらに押し下げることが貸し出しの促進につながるかは不透明だ。


 FRB他の政策を合わせて実施することによって政策手段の効果を高めることが可能だろう。例えば、準備預金に対する罰則金利の導入や貸し出しを拡大させるための数値目標の導入だ。しかし貸し出し向けに一段の資金を供給することは、満たされていない融資需要がある場合のみに有効であり、一部のエコノミストはその点に疑問を持っている。


 <市場への影響は> 


 シカゴ大学ブース・ビジネス・スクールのAnil Kashyap教授は「FRBが象徴的にポートフォリオの再投資を決定し、国債を買い入れたとしても、金利に大きな影響があるかどうか分からない。しかし米国債市場には大きな効果があるだろう」と指摘する。


 資産の買い入れは国債価格と利回りに影響し、10年債のような期間が長めの金利が短期債の金利に近づくとエコノミストはみている。


 <追加緩和措置の欠点は>


 一段の資産買い入れによってFRBの信認が損なわれる可能性がある。ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は、FRBが米国の膨大な財政赤字や債務を賄うために紙幣を増刷すれば、ドルの信認を損ない、金利を上昇させる可能性があると警告している。


 一方、低金利維持についての文言を強めることは、経済が転換し、インフレ抑制のための迅速な行動の必要性を認識したときに、政策担当者の手足を縛りかねない措置だ。


 もしFRBの措置が期待通りの経済活性化につながらなければ、FRBの有効性に疑問符がつく可能性もある。ひいてはインフレ期待をコントロールするFRBの能力にも悪影響が出かねないとエコノミストは指摘する。


 <デフレや流動性のわなのリスクは>

 
 一部のエコノミストFRBが一段の流動性を市場に供給した場合、消費者や企業が借り入れや支出には動かず、既に低い金利や物価がさらに下がることへの期待から行動を控えるのではないかと懸念している。


 日銀も量的緩和に乗り出した2000年代初めに同様の問題に直面した。日銀が量的緩和を開始したのはデフレが定着したあとであり、効果が限られていたとエコノミストは指摘している。


 米国では緩やかなペースではあるものの、物価は依然上昇している。


 <追加緩和の実現性は>


 最近の経済指標の大半は景気回復が鈍化しているというシグナルを送っているが、エコノミストの多くは、より明確な警報が発せられるまで、FRBが行動を控える公算が大きいと話す。シカゴ大学のKashyap教授は「バーナンキ議長は髪に火がついた状態で走り回っているわけでも、大転換が差し迫っているという合図を送ろうとしているわけでもない」と指摘し、「緩和に踏み切る余地はあるが、既にかなり大量の刺激策を実施しているとの認識も持っていると思う」と述べた。

 
 TDセキュリティーズのエコノミストは投資家向けの調査メモで、FRBの追加緩和のきっかけとなりそうな要因について、1)インフレ率がゼロもしくはマイナスとなる、2)雇用・住宅面での悪いニュースが続く、2)消費者の予想が物価下落にシフトする、4)ドル高と株安が進む、などを挙げた。


 先物市場関係者はFRBが今後数カ月以内に短期金利を引き下げる確率をある程度相場に織り込んでおり、FRBによる利上げは、少なくとも1年後までは相場には完全に織り込まれていない。