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【平野貞夫の国づくり人づくり政治講座】第83号 2010年10月01日発行

『 菅政権の統治能力は最悪だ 』
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平成15年9月に民主党自由党が合併して、翌年7月の参院議員任期満了まで11ヵ月の間、私は民主党所属の国会議員を勤めていた。民主党の長所も欠点も知っているが、これほど民主党の指導者たちの人間としてのレベルの低さを、知らなかったことが恥ずかしい。


私が早めに参院議員を引退した主要な理由の一つは、世代交代であった。40代50代の優れた政治家たちに活躍する場をつくることであった。民主党には他党と比べ将来を期待できる人材がいると思っていたが、そうでなかった。ごく数人は思想や知能も優れておるが、現在、閣僚や党幹部の役職に就いて目立っている人物ほど問題がある。


何が問題かといえば、「政治の本質」が、まるっきりわかっていないことである。私は民主党OB国会議員として、政権交代を行うについて「統治能力とは自己抑制能力だ」と、その心がまえを訴えてきたが、鳩山政権でも、菅政権でも理解する人物はいなかった。


民主党政権の指導的立場の政治家の多くは、偏差値が高く学校の成績が良く、有名大学を出て難関な国家試験などをパスしている。わが国の教育システムに問題があることが原因で、学識と見識とのバランスが取れていないといえる。専門的知識が高い人ほど、人間としての見識ができていない。


政権を担当するということは、議会民主政治で国論を統一し、法律や制度をつくって国の繁栄や国民の幸せを向上させることである。それは赤子を育てたり、動物を育てたり、花や樹を育てるように、物理的に水をやったり肥料をやったりすることだけではない。温かい心の交流と感動が必要である。


民主党の指導者たちは、政治を論理と合理性と効率性と計画があればよいと考えている。それで人間や国家が動くものと思っている。政治の対象が人間であることを理解していないのである。この民主党政権の欠点をあからさまに露出したのは尖閣列島をめぐる中国漁船船長逮捕問題である。中国船長が日本の領海を侵犯したことは事実であったし、公務執行妨害の容疑があったことも事実である。非は中国船長にあることは論を要しない。


問題はどこにあるのか。残念なことに尖閣列島をめぐる中国側の主張は、国際法からいっても正当でない。さらに類似の問題が過去にもあり、慣例として外交問題とならないよういろいろな配慮が行われていたことも事実である。


問題の第一は、事件発生の時期に外交問題として配慮することを政府当局がどう判断したかである。前原国交大臣は「国内法で粛々と処理する」と何度も表明した。菅首相も同じ発言をくり返した。ところがその時期、中国側は国内的事情から前例どおり日本側の外交的配慮を期待して、さまざまな裏交渉があったようだ。「粛々と」という言葉は、中国にとって情のない事実上の宣戦布告と感じた。そこで次々と対日硬化策を宣告してきた。日本側は長期間の勾留の末、形だけは検察の判断で釈放した。それだったら何故、当初政治的判断をしなかったのか。


第二の問題は、国益上の立場が大事なら、どうして沖縄地検の判断という形で保釈を決め発表したのかということだ。検察法にもとづいて「社会的影響の大きな場合」の特例と理屈で対応しているが、馬鹿も休み休みいえと言いたい。仙谷官房長官を中心に訪米中の菅首相、前原外相と協議した上の処理であることは間違いない。どうして菅内閣の判断として対応したと言えないのか。これでは政治が検察を利用して責任を逃れただけだ。


さらに最大な愚かな政治家がいた。9月26日のTVで、岡田幹事長は「中国は民主主義の国ではない」との発言をした。この時期にこんな発言をするとはどうしようもない。「日本は民主主義の国」か、岡田幹事長に問うてみたい。