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内海元財務官:右肩上がりの円高終えんへ−米緩和織り込み

  円高の背景にあるドル安傾向などから、ドル基軸通貨体制が揺らいでいるとの見方が出ていることに対しては「全く意味を成さない」と否定。ドルの決済面での優位性に加え、通貨価値の面からも、「長期的にみて米国経済の強さはそんなに簡単には消えるわけがない」と述べ、「ドルの右肩下がりみたいな議論はないと思うし、逆に言うと日本円の右肩上がりも、もう終わっている」と強調した。

  内海氏は円高の進行に関して「むしろ心配なのは、投機的にファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)を反映しない中で、日本企業が早計に生産拠点を外に移す決定をして実際に動くことだ」と懸念。1995年に円が最高値の1ドル=79.75円をつけた後、日本企業がASEAN東南アジア諸国連合)などに生産拠点を移転したものの、その後の円安で結果的には損失を受けたことを例に挙げた。

  自国通貨を安く誘導し輸出拡大を図る通貨安競争の動きについては、「先進国の間に、通貨安競争はない」と述べる一方、「金融緩和競争みたいなものは現象としては起こっている。それがドル安を生み出していることは事実だ」との認識を示した。

  一方、米国を中心に国際的な圧力が高まっている、人民元相場の柔軟化をめぐり、中国が自国の置かれている状況を「プラザ合意の時の日本と重ねていること」は間違いだと指摘。現在の中国は、人民元が資本勘定を含め完全に自由化されていないとして、円が1ドル=360円の固定相場から変動相場へ移行した、1971年のニクソン・ショック前の日本の状態にあるとの認識を示した。


  さらに、プラザ合意には日本も前向きに関与したと語り、「中国が間違っているのは、日本がアメリカにやられたと。そうではない。日本も一緒になってやった」と強調。その背景として、同合意前の1ドル=約240円の為替水準では、「何の企業努力もなく、いくらでも輸出ができる。日本の企業は内需を開拓するための製品開発の努力をする必要がなかった」と述べ、「それがむしろ日本経済にとってネガティブに働いた時代だった」と説明。


  結果として、急激な円高を受け、企業は「猛烈なコストカット」をする一方、円高の恩恵で原材料費が安く輸入ができるようになり、「競争力が強くなった」との見方を示した。ドル高是正を目指した1985年9月のプラザ合意では、1年後にほぼドルの価値が半減した。

 一方、日本銀行が5日打ち出した株価指数連動型上場投資信託ETF)など金融資産を買い入れるための基金創設の検討については、資産デフレを防ぐことに「一番心理的に効果があるかもしれない」と指摘。「資産デフレを防ぐことに踏み込んだ」のは「相当な禁じ手」と述べ、「それを中央銀行がやってよいかというのは、将来に残ると思う」との見方を示した。