持続不可能なグローバル・インバランスが元に戻るということ - 藤沢数希
そして現在も世界はこのグローバル・インバランスの調整プロセスがつづいているのである。経常赤字国、つまり過剰債務国は、債務返済のために消費や投資を控えなければいけない。そのため資金需要が落ち込み、アメリカやヨーロッパの金利が大きく低下する。日本の金利は最初からほとんどゼロで低下余地がないので、欧米諸国と日本の金利差は一気に縮小した。そして教科書通りにドルやユーロは円に対して切り下がっていった。このように安くなったドルやユーロは欧米諸国の輸出を増加させ(日本の輸出を減少させ)グローバル・インバランスを是正していく。最近の円高もこのような世界の大きな流れの中にあっては、多少の介入をしたところで簡単に動かせるようなものではないことがわかろう。
日本のような成熟した先進国は、工場で作ったものを欧米に売って外貨を稼ぐというような途上国型のモデルから産業構造を変革しなければいけないのである。筆者は、いっそのことバブル崩壊前のアメリカのビジネス・モデルを真似して強い円政策で金融立国を目指してみてもいいのではないかと思うがどうだろうか。法人税、所得税などの税制や金融規制を改正して、世界中から金融人材を呼び込み、アジアの金融センターに返り咲くまたとないチャンスなのだけれども。