「日本各地で熊の被害が出ている。奄美大島では豪雨で大変な状況。この2つの現象は地球環境問題だ。真剣に考えないと、地球が危ない、日本が危ない……」 そして、少し間をおいて、次のように付け加えた。
「さて、国会の方は民主党が危ないっていう状況かもしれません」
輿石氏としては記者会見のつかみのネタであり、冗談のつもりで言ったのだろう。記者団からは含み笑いが漏れた。
だが、ふざけている場合ではない。地球環境問題と同様に、現に菅直人政権は今、危機的状況にある。外交、内政などあらゆる政策で、政権は壁に突き当たっている上に、臨時国会は今後も審議の停滞が続く可能性があり、政府・民主党はほとんどの法案を成立させられないという「危ない」状況に陥りつつあるのだ。
野党が閣僚を挑発して失言を引き出そうという戦法をとるのは、よくあることだ。政策論議をかわすべき場である本来の国会の姿から考えて、こうした手法はあまり誉められたものとは言えない。だが、挑発に乗る方も乗る方である。売り言葉に買い言葉という面もあるだろうが、菅首相らは売られた喧嘩をすべて買わなければならないと勘違いしているようである。適当にごまかしたり、かわしたりすればいいものを一々反論して、かえって泥沼にはまっている。ここまでくると、答弁技術の巧拙というよりも、菅首相や仙谷氏の性格の問題ではないかとさえ思えてくる。
いずれにしても、こんな応酬が続く今国会は事実上の空転状態にあると言っていいだろう。現にこの臨時国会で今までに成立した法律は、22日の参院本会議で全会一致で可決した口蹄疫対策の関連法2本のみである。
こんな状況を受けて、今国会は菅政権が絶対に譲ることのできない補正予算案とその他わずかばかりの当たり障りのない法案が成立するだけで、他には何もできないだろうという見方が与野党双方に広がっている。
今のままでは、与党の一員である国民新党が固執する郵政改革法案、社民党がこだわる労働者派遣法改正案はもちろんのこと、民主党が提唱してきた政治主導確立法案でさえ成立は危うい。
菅首相周辺によれば、「今、首相の頭の中はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のことでいっぱい」だという。
我が身を振り返って、菅首相はこう言ったという。
「中国との問題にしても他の問題にしても、やはり政権がきっちりと確立することによって外交も確立するんだ」
つまり、国内政治で行き詰まって外交に逃避しようとしても、その外交は国内での安定的基盤がなければうまくいかない。そんな八方ふさがりの状態にあるのが今の菅政権だ。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20101025#1287994171
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20101014#1287055446
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20101011#1286809320