ちなみに、大型の法律事務所というのが日本に登場したのはここ10年ばかりのことであり、それ以前は100人を超える弁護士事務所というのは存在しなかった。左翼系の合同事務所というのが割合人数を多くかかえる傾向があったが、それでも20〜30人も弁護士がいれば極めて大きい方であった。
それが、法曹養成制度の改革により司法試験合格者数が増大したのと、渉外法律事務(要するに外国企業と日本企業との取引・契約交渉、まれに紛争処理)が弁護士に求められるようになったこと、さらにはM&A関係の法律事務や株主総会関係の法律事務、会社の倒産処理業務など、会社法業務が増大した。これらは、多人数の弁護士が分担して仕事をするスタイルを要し、訴訟代理人のように個々の弁護士が一人ないし少数で追行する伝統的な法律事務とは異なっていた。そこで、その多人数型の法律事務に対応を迫られる形で大事務所が人数を増やし、合併を繰り返して巨大化したのである。