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法学入門

法学入門

10代のための「学び」考 東京大名誉教授 日本学士院会員 星野英一

 高校卒業後は、父が弁護士だったこともあり、東京大法学部に進み、明治以降最も著名な民法学者といわれる我妻榮(わがつまさかえ)先生に学びました。民法は全1044条あり、学問としての歴史も古く、その起源はローマ法にまで遡ります。ところが、我妻先生は講義で「ここから先は今後の問題です」とよくおっしゃいました。「我妻先生でも、まだわからないことがあるのか」――未知なるものへの興味・関心が強かった私は「民法はなんて奥が深いのだろう」と感じ、民法学者を志すようになったのです。

 学びへの意欲はありましたが、大学時代は我妻先生の講義に圧倒され、先生の著書である『民法講義』のような本は書けないと思っていました。また、法学は自然科学のような飛躍的な発見はなく、アイデアが浮かんでもだれかが既に発表していることがよくあります。ですから、我妻先生の講義を聞いて疑問を抱いていても、しっかり論証できる根拠にたどりつくまでは通説に従っていました。

定説を覆すような研究に打ち込み、のちに「フランス民法典のルネサンス」と呼ばれることになった研究動向を開くことができた

民法を学ぶには、まず民法の各制度・各規定の意味や趣旨を理解し、ルーツを明らかにする必要がある」

「現在の最高峰の学問を修得し、その上に立って研究しなければならない」。

 当時、下火であった法解釈学にこだわって研究を続けたのも同様の理由です。戦後の日本の民法学は、社会で法制度がどのような働きをしているのかという法社会学が盛んに研究されていました。しかし、私は「民法を勉強する以上、伝統的な法解釈学を学ぶことが出発点になる」と感じていました。その中で、何とかして新しい学問の方法論を見つけたいと考え、当時の民法学に一石を投じることになる「利益考量論(注)」という法解釈の方法を提示することができたのです。

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