保守論壇改造論(7)…田中美知太郎とソクラテス、プラトン、アリストテレス(二)
実は、田中美知太郎は順風満帆に学者人生を送ってきた人ではない。それは、東大選科出身のために、苦労に苦労を重ねてやっと京都大学教授になった哲学者・西田幾多郎の人生によく似ている。
しかし、そうした数々の苦難にもかかわらず、田中美知太郎は、同じく選科卒の西田幾多郎とともに、皮肉なことに「選科卒」だからこそ成し遂げられたのかも知れないが、他の追随を許さないほどの偉大な学問的業績を積み重ね、結局、日本の哲学研究の歴史に欠かせない存在となっている。
むろん、保守思想家としての田中美知太郎の思想とは、ギリシャ哲学研究と直結していた。それは、一言で言えば、ソクラテスやプラトンと同じように、「自分の頭で考える」という思想であった。これは、もう一人の保守思想家・小林秀雄の思想にも通じる思想である。つまり、「左翼は何も考えていない」「左翼は考えさせられているだけだ」というのが、田中美知太郎や小林秀雄等の「思想」であり「確信」であった。