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出世するスター社員の条件は変わった! いまどきの出来るリーダーは行列で順番を譲る 〜スタンフォード大学の名物教授 ロバート・サットンが語るリーダーシップ進化論|世界に学ぶリーダーシップとグローバルマインドの育て方|ダイヤモンド・オンライン

――景気後退下でのグローバル競争の激化、既存ビジネスの秩序を崩す破壊的イノベーションの加速など、主に先進諸国の企業が置かれた事業環境はいっそう厳しいものになってきている。そうした環境の中で、今もっとも求められている人材の条件とは何であると考えるか。


 ひとことで言えば、「行動しながら学ぶ」ことができるタイプの人間だろう。あるいは、日々変化する環境の中で自省的になれる人間と言ってもいい。

――現在の企業の人材評価制度は、そうした「行動しながら学ぶタイプ」の人間を正当に評価できているのだろうか。


「未来はすでにやってきた。しかしバラバラに」というフレーズがあるが、この議論にもその言葉が見事に当てはまる。先進的な企業は、すでにそうした要素をきちんと(人材評価に)取り入れている。社員を評価する際に、売り上げや個人的なクリエイティブ能力ではなく、「まわりの人間が成功するのをどれだけ手助けしたか」という視点からまず評価している。


 これは、どちらかというとアジア的、日本的な価値観なのではないだろうか。そもそも競争社会のアメリカでは非常に難しいことであり、日本の製造現場のシステムを取り入れても、作業員間の協力を引き出すためにはエサをぶら下げることが必要だった。しかし、今ではGE(ゼネラル・エレクトリック)、マッキンゼー、P&G、ピクサーなどの企業がそうした評価基準を取り入れている。そこでは「スター社員」の定義とは、周囲の人間を助ける「利他的」な人物ということになっている。

――さて、リーダーシップに話を移したい。昨年秋、『いいボス、悪いボス(Good Boss, Bad Boss)』という本を出されたが、現在求められているリーダーシップとはどのようなものなのか。


 本を出してから、ありとあらゆる規模の企業やグループに対してレクチャーをしてきた。もちろん、業種や企業規模によって違いはあるが、リーダーシップに関して共通しているのは、みな「自分の仕事をちゃんとこなし、周囲の人間に尊敬の念を持って接する上司」を求めているということだ。


 やはり「利他的」な人物ということになる。“利他的”の定義は状況によって異なるだろう。500万ドルのボーナスを放棄したボスかもしれないし、行列の順番を譲ってくれたボスになるかもしれない。


 だが、どんなときでも、自分を背後からサポートし、失敗や悪評を身代わりになって受けてくれるような上司や組織に、社員は忠誠心を感じるのだ。

――社員のやる気を起こさせるような職場をつくるにはどうしたらいいのか。


「ネガティブなものを取り除く」ことだ。その職場に、どんなに素晴らしく仕事ができるスター社員がいても、物事に否定的でシニカルで嫌なヤツならば、その人物がもたらす悪は善より大きくなる。ネガティブなものを排除して、ポシティブなものを強める以外に、職場を改善させる方法はないだろう。


 また、できない社員は、上司にサポートされていないことが原因というケースがよくある。要するに、上司はヒューマニティを持って、周囲の人間を助けなければならないということだ。職場でリーダー的な立場にある人間なら、それこそ毎朝、鏡に向かって「業績が伸びないのは、お前のせいか」と問うべきだろう。


 リーダーというのは、他人の問題の解決にばかり時間を費やされて、自分のことなど何もできなくなるものだ。権力と金に目がくらんでリーダーになりたい人間はたくさんいるが、実際にその立場に立ってみると話が違うと愕然とするだろう。本物のリーダーは、他人を成功に導く人間でなければならない。

――では、そうしたスキル教育を含めて、企業での人材教育はどうあるべきなのか。


 実は大人だけでなく、子供向けの教育でも、大きな変化が起こっている。それは、イマーシブ(immersive)、すなわち身を浸すような実地体験が中心になっているということだ。スタンフォード大学のエグゼクティブ教育(企業の管理層に向けた再教育プログラム)でも同様で、講義中心から、現場に出向き、そこでの人々の行動を観察することに力点が移っている。


 たとえば、格安航空会社ジェットブルーの再教育を行った際には、サンフランシスコ国際空港に行って、利用者に話を聞き、空港での人々の動きを観察して、どうしたらサービス面での新しいイノベーションを生み出せるかを話し合った。


 もちろん、講義やケーススタディ研究などがなくなることはないが、こうしたイマーシブな体験によって、最初に挙げた「行動しながら学ぶ」こと、「自省に基づいて行動する」ことができるようになる。話をしているだけでなく、実際に行動することこそが重要なのだ。