https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか? 【その5】 実話をベースとした日本初の「そうじ小説」|なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?|ダイヤモンド・オンライン

そうじはみんなでやっているけど、やり方はそれぞれバラバラだ。窓を一生懸命に拭く人。隅っこを徹底的にキレイにする人。同じ場所を何回も掃く人。でも、みんなそれぞれが、どうしたら早くキレイになるか考えながらそうじしているはずなんだ。誰でも時間をムダにしたくはないからな。その中で、打ち合わせなんてしないからわからないけど、一人ひとりが何か変った気がするんだよ」


「どこがですか?」


「うまくは言えんのだが…、1つだけ『ゴミが出なくなったという事実』をもとにして言うと、そうじをしているうちにゴミそのものを出さない工夫をするようになったんじゃないかな。なぜかというと、ゴミを出すと、結局、後で自分がそうじをしなくちゃいけない。なら、最初からゴミを出さないように工夫すればいい。例えば、封筒を開封した際の切れ端。ホチキスの針。そういった細かいゴミは、それこそ、今までは床に落としたこともあったかもしれない。でも、そうじを意識していると、ちゃんとゴミ箱に入れる。コピーもだ。ムダを出さないように、無意識にミスコピーをしないようにと考えるようになったんじゃないかなって」

「いいかな、青年。本当はこんなことは教えることじゃないんじゃ。拾った者だけがわかることなんじゃ。拾った者だけがご褒美をもらえるとでもいうのかな。しかし特別じゃ。もう、キミには会えんかもしれんからな…」

「ある夏の暑い日のことじゃった。1人の紳士が汗を拭き拭き入ってきた。それを見たワシはすかさず、エアコンの風が当たる席に案内した。えらく喜んでくれてな。チップまでくれたんじゃ、それもかなり多く」


「はい…」


 圭介は、一瞬で、老人の昔話に引き込まれた。


「それから数日後にまた、その紳士はやってきた。前のことが頭にあって、迷わずエアコンの前の席へと案内をしたんじゃ。するとな、『バカモン!』と怒られた。なぜじゃと思うかな」


「……」


「その日も確かに暑い日じゃったが、紳士は汗1つかいておらなんだ。なぜなら、ホテルの玄関までハイヤーで乗りつけたからじゃった。叱りつけられた後で、その紳士はまだ若造だったワシに教えてくれた……。『仕事とは気づき』じゃとな。『気づきをたくさんするためには、そうじをしなさい』と言われたのじゃ。それでワシはそうじを始めた。早く出勤して開店前のレストランを嘗めるようにそうじした」


「はい…」


「そのうち、何だかわからんがな…、今まで見えなかったものが見えてくるようになったんじゃ。お前さんの好きな理屈で言うとこういうことじゃ。そうじというのは、汚い所をキレイにするということじゃ。まず、汚い所を探すことが習慣になる。ウエイターの仕事をしていても、四六時中、フロアに何かゴミが落ちていないか気遣うようになったんだな。そのおかげで、お客様の忘れ物や落し物を何度見つけたことか。お客様が店を出る寸前に声をかけて渡すと、非常に感謝された。そして、もちろん、さっきのような過ちはせんようになった。お客様が何を欲しておられるか、何を望んでおられるか、声をかけられる前に『考えて気づく』というクセが身についたんじゃ。もちろん、何年も、何年もかかったな、これには…」

「おぉ、そうだ。1つ言い忘れておった。忠告しておくがな、実は、そういうわけで、そうじをすると売上が上がるんじゃよ。だがな、問題はそこにある。『売上が上がるから拾おうとか、お金が手に入るから拾おう』と思ったとたん、売上が上がらなくなる。これがまた不思議でな。このカラクリは、ワシもいまだにわからん。ワッハハハ」

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080509#1210293349