かつて、菅首相に近い人から、その人となりについてうかがった際、外に向かって次第に大きくなっていく渦巻き模様になぞらえて、「渦巻き型の政治家だ」と喝破したのが思い出される。次から次にテーマを取り換え、そのたびに異なる人間関係を構築する。しがらみや過去の言動にお構いなく、最適とされるカードを迷わず切って、事態を乗り越える−。こんな政治行動が見て取れる。
とすれば、菅首相の思考形態を察するに、積み上げ方式ではないから血肉となった政治理念なんぞあるはずもない。行動を裏打ちする原理は、実に功利的、実利的であり、ときに勘違い甚だしい自信過剰をもたらし、混迷を増幅させてしまう。ましてや肝胆相照らす同志ができようはずがない。