裁判員制度が憲法に反するかどうかが争われたフィリピン人女性による覚せい剤取締法違反事件の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は16日、「公平な裁判所での法と証拠に基づく適正な裁判は十分保障されており、憲法に違反しない」として合憲との初判断を示した。
大法廷はまず、刑事司法への国民参加の合憲性について「憲法の基本原理や刑事裁判の諸原則、憲法制定の経緯などを考慮して判断すべきだ」と指摘。陪審制や参審制が定着している欧米の実情や、国内でも戦前に一時、陪審裁判が行われていた経緯を踏まえ、「刑事裁判に国民が参加して民主的基盤の強化を図ることと、憲法の定める人権保障を全うしつつ適正な刑事裁判を実現することは相いれないものではない」と述べた。
その上で、制度を憲法の各条文に照らし、「憲法は、国民の司法参加を禁じているとは解釈されない」と判断。裁判員裁判について「裁判官と、中立性の確保に配慮された裁判員で構成されている。裁判員の判断は必ずしも法律的な知識が不可欠とは言えない。刑事裁判の諸原則の保障は裁判官に委ねられている」と結論づけた。
裁判員制度は「合憲」=最高裁大法廷で初判断―15裁判官が全員一致
判決で大法廷は、多くの欧米諸国が国民の司法参加を認めていることや、憲法の制定過程では陪審制や参審制の採用も可能だと解釈されていたことを挙げ、「憲法は一般的には国民の司法参加を許容している」と判断した。
さらに、裁判員は公平性、中立性を確保できるよう配慮して選ばれており、裁判員の関与する判断には法律的な知識が必要ではないと指摘。「裁判員が裁判官との協議を通じて良識ある結論に達することは十分期待できる」と述べ、「裁判員の参加した裁判は憲法の定める『裁判所』に当たらない」とする弁護側の違憲主張を退けた。
大法廷は判決理由で、司法の国民参加が欧米諸国や日本で採用されてきた歴史的背景を述べ、「刑事裁判に国民が参加して、民主的基盤の強化を図ることと、憲法の定める人権の保障を全うしつつ適正な刑事裁判を実現することとは相容れないものではない」と指摘。
その上で、裁判員と裁判官が共同で評議、評決する制度の仕組みについて「適正な裁判は十分保障され、被告の権利保護も配慮されており、憲法が定める刑事裁判の諸原則を確保する上での支障はない」とした。