本来ならば、春以降に本格化するとみられる復興需要などをにらみ、国内生産への期待が少しずつ膨らみ始めてもおかしくない時期に来ている。31日発表の12月鉱工業生産の先行き見通しでは、タイ洪水の挽回生産が1月まで生産を押し上げ、2月も表面的には上昇を維持する見通しが示されている。
しかし、企業、金融市場ともに期待感が広がってこない。タイの洪水による落ち込みを一時的に取り戻しても、世界経済の行方に不透明感が大きく、その後の展開に自信が持てないためだ。
世界各地の景気動向をみると、金融市場の不安に比べれば減速感は緩やかなものにとどまっている。欧州では「主要な日本企業への影響はさほど出ていない」(ジェトロ)という状況だ。米国はガソリン価格の落ち着きや住宅着工の持ち直しなどもあり雇用情勢が改善しつつある。家計のバランスシート調整を抱えながらの低成長が続く見通しながら、景気の改善が見られ、内閣府が貿易統計をもとに試算した数量指数では、日本の米国向け輸出数量は昨年12月にリーマンショック前の水準まで急回復している。
一方で従来日本経済の成長のけん引役となってきた中国経済は減速傾向が明らかとなっている。これは、欧州経済停滞の余波や金融引き締めの影響など、景気循環的な要因だけではない。専門家の多くが指摘するのが、中国の供給力低下だ。すでに中国では一人っ子政策による人口減少局面に入りつつあり、これまでのような9─10%の成長は困難となりつつあるという。