『若い読者のための世界史(上)』
P118
ところで、きみにはぜひとも知っておいてもらいたいことがある。若い王アレクサンドロスは、ただ勇敢で野心にもえる戦士であっただけでなく、長い巻き毛をもつうつくしい、そして、当時人が知ることのできたすべてを知る若者であったということだ。そして彼の先生は、当時の世界が知るもっともすぐれた人物、ギリシアの哲学者アリストテレスであった。それが何を意味するか。アリストテレスは、たんにアレクサンドロスの先生であっただけでなく、その後の二千年のあいだ人間の教師でありつづけたと聞けば、きみにもだいたいの想像はつくだろう。
アリストテレスは、これらすべてのことを教えた。そしてアレクサンドロスは、まちがいなく良き生徒であった。彼がもっとも好んで読んだのは、ホメロスの英雄物語であった。寝るときでさえも、この書を枕の下においたという。
P120
このような王に、軍隊のなかのマケドニア人だけでなくギリシア人もまた、こころをひきつけられた。彼らは、よろこんで彼のために戦おうとした。それゆえ、ペルシアに向かったときのアレクサンドロスは、自信に満ちていた。彼は、自分の持ち物すべてを友人たちにあたえた。おどろいて、「あなたには何ものこらないではないか」と問うと、彼らに王は、「いや、未来がある」と答えたという。