https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

コラム:IMFは緊縮策の弊害回避を=サマーズ氏

先進国の大半では、最初は金融だけの問題だったことが深刻な構造問題に発展しつつある。

そのことは、世界のリーダーが失敗を犯したことを意味し、世界的な経済アーキテクチャーの改革を求める声が高まるだろう。

短期的には成長の促進や雇用拡大を重視し、長期的には債務を抑制する必要があることについては誰でも見解が一致しているが、その方法をめぐっては各国内、および国ごとのどちらの面でも、見解に大きな隔たりがある。


「オーソドックスな見解」は、公的および民間セクターによる過度の借り入れが現在の問題を招いたと考え、長期的に債務の増大を抑制する必要性を強調する一方、緊縮的な財政政策や金融政策を重視し、成長を刺激するため需要喚起を目指す短期的な措置よりも長期的な構造改革が必要だと指摘している。


それに対し、「需要サポート見解」は、債務の増大を抑制し、インフレ率の上昇を食い止める必要性を認識しながらも、景気を押し上げ、所得拡大、雇用創出、金融セクターの強化という好循環を生み出すため、短期的に需要を拡大する措置が必要だと強調している。


過去2―3年、経済に関する世界の議論は、この2つの見解の間で揺れ動いてきた。2009年春や現在のように成長に対する不安がとりわけ強い時期には、すべてではないにしても、国際通貨基金IMF)をはじめとする金融・財政当局は需要を喚起する政策を重視する傾向が高まる。しかし、成長を取り巻く霧が晴れ始めれば、早々に「オーソドックスな見解」が盛り返し、緊縮財政策や長期的な金融の健全性に関心がシフトしてきた。


こうした動きは、どちらの「見解」に与したとしても危険なサイクルとなる。医師は患者に抗生物質を投与する際、症状が改善しても抗生物質の服用を途中でやめないよう注意を促す。途中で服用をやめれば、症状が再発するリスクがあるばかりか、抗生物質が効かなくなる恐れがあるためだ。


経済政策にしても同じことだ。需要促進を重視している私のような人々は、景気拡大策が講じられる期間が短すぎれば成長を軌道に乗せることができないばかりか、政策の有効性が損なわれ、政策に対する信頼感も低下すると懸念している。


東京で開かれたIMF・世銀会合がただちに効果を発揮することはないだろう。だが、需要を持続させ、緊縮策がもたらす弊害を避ける必要があるとの認識をIMFが示したことは、中期的に非常に重要な意味を持つ可能性がある。もちろん、次に経済が不安定化した時までIMFがそうした認識を持ち続けた場合ではあるが。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20110723#1311419637