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【旧制高校 寮歌物語(13)】プライドくすぐった寮の自治

 旧制高校の門をくぐった生徒たちのほとんどは寮に入る。24時間、先輩や同級生と生活を共にし、読書や議論に明け暮れ、ときには、けんかもしながら切磋琢磨(せっさたくま)の日々を過ごす。共同生活で嫌われるのは、卑怯(ひきょう)なヤツ、ルールを守らないヤツだ。リーダーが生まれ、自分の“立ち位置”や守らねばならないオキテが分かってくる。日頃の駄弁(だべ)りの中で「教養が薄い」と思われるのは恥だから、必死に本を読む。学識・知識を深めるだけではない。教養を積むことによって自らを高めてゆく。

 寮生活で何よりも大事なものとして寮歌に歌われたのは「自由」と「自治」、仲間たちとの「友情」である。

 生徒自らが運営し、規律を作り、自らが責任を取ることを徹底していた。

 現代の若者には、こうした「自らが主体となる共同生活」を送る経験がほとんどない。濃厚な人間関係の中で“揉まれる”ことも少ない。だから、他人とうまく付き合うことが苦手で、ちょっとした挫折で「心が折れて」しまうのだ。

 木下が、寮の自治とともに一高に持ち込んだ精神に「籠城主義」がある。寮生は、世俗的な巷(ちまた)とは一線を画し、孤高であれ、という考え方だ。

 一高には「正門主義」もあった。生徒は堂々と「正門」から出入りすべきで、決して、塀を乗り越えたり、「正門」以外から出入りしてはならない、というルールである。