「信頼で人間関係の成り立つ、現代劇の先にある超現代劇だ」
ドラマのロケ地を昨年10月下旬に訪ねた。収録の手応えを聞くと「振り返る余裕がない。今日、明日、明後日、そんな感じ。野球選手と同じ。とにかく『今日』なんです」と語り、一日一日の撮影に魂を込めている様子だった。
「僕はこれは現代劇だと思っている。頼母みたいな人は今も現実にたくさんいらっしゃって、僕は憧れてきた。現代とつながっていなければ実感できないですよ」
「むしろ現代より先にいっている。この時代は情報がなく信頼しかない。その中に成り立っている人間の生活は、こんなに美しいものか、激しいのか、厳しいのかと感じますね」
語り口調は静かでも、声はとてもよく響く。
「昔、東野英治郎さんと一緒に舞台で親子の役をやった。『おまえの声はうるさい。劇場の壁にあたって、また返ってくる。演劇というのは、人の心に届くようにしゃべらなくてはいけない』と言われましてね。僕一人の中で鍛錬してできたのではない」。取材中、随所で先人や共演者への敬意の言葉が聞かれた。
「言葉遣いが難しかった。例えば『ござそうらはずや』。これは『そうじゃないですか』という意味だけど、この時代に響いた言葉の魂を、僕の肉体を通して響かせること。それが俳優の役目だと思うよ」
物語は7時間の大長編。「とてもおかしい、笑ってしまうような場面に、ぽんっと生と死をわけるような話が入ってきたりする。(脚本の)ジェームス三木先生の本の中には、宝石がちりばめてある。それを僕は発見しなきゃいけない。大変は大変だけど、それがやりがいでもあり、楽しみでもありますね」