『天風先生座談』
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そこで、これから観念要素の更改について話しましょう。これはまた、あなた方の多くが気がついていない。人間の心でおこなう、この、思考というものですが、心の表面では実在意識というものがおこなっている。しかし、人間が何事を思うにつけても、考えるにつけても、この心の表面の実在意識だけで、その単一な働きだけで、ものを思ったり考えたりするものではないのであります。実在意識の奥にもう一つ、潜在意識というものがある。俗に心の倉庫と言います。
この中で思ったり考えたりするすべての材料が、観念要素と名づけられてはいっている。何かものを考えようとすると、すぐこの観念要素が、ひょいひょいと飛び出して来ては、実在意識となる。そして、その思い方考え方に、一連のアイディアを組み立てるのであります。
この侵すべからざる大きな事実を、静かに考えてみると、人間の思い方考え方が、尊くなるのも卑しくなるのも、強くなるのも弱くなるのも、正しくなるのも清くなるのも、結局はこの観念要素の状態に左右されているということになる。そういうことに、たいていの場合、気がつかない。