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アベノミクスで経済は「再生」するのか? …勿論しない

一部の自称マクロ経済学者は、「自分のいう通りにしたら経済はたちまち良くなり、日本は成長路線に乗る」と言わんがばかりの事を言っているが、本当に自分達にそんな力があると思っているのだろうか? 投機筋の思惑で動く「為替」や「株」の事だけでなく、「実体経済」を動かす産業界の現実を、彼等は果たしてどれだけ理解しているのだろうか?

今経済が停滞しているのは、「金融緩和」が十分でないからでもなく、「公共投資」が十分でないからでもない(まさか、本当にそんな風に思っている能天気な人はいないだろうが)。問題の根幹は、徐々に国際競争力を失いつつある産業界が、全体として自信を喪失している事だ。


だから、産業界は、アベノミクス等は適当に聞き流し、自らの体質改善こそを真剣に考えるべきだ(或いは、自信のある経営者は、「政府は要らぬ事はせずに、我々が仕事をやりやすい環境を作ってくれればそれでよい」とはっきり言うべきだ)。それなくしては、「経済の再生」などはお題目だけで、実現は「夢のまた夢」だ。

「経済再生」とは、要するに「多くの企業が将来に自信を持ち、投資を増やし、雇用も増やすようになる。これによって、現実にGDPが増加し、税収も増えて、財政も健全化する」という事を意味する筈だが、「企業の競争力」が増大しなければ、或いは「新しい産業」が生まれてこなければ、これは実現しない。この為に「政治」がやれる事も若干はあろうが、基本的には産業界自体が変わらなければならない。

大きな期待を負いながら大負けに負けてきた分野が、「半導体」「情報通信機器」「家電」等の分野である事に、異論のある人は少ないだろう。とにかく「過去の栄光」との落差が激しいのだ。


この分野の事について、特に一般人には分かりにくい「半導体」の分野について、私は最近、湯之上隆という人の書かれた「電機・半導体大崩壊の教訓」(日本文芸社刊)という本を読んで、いたく感心した。私もこの分野に近いところで長年仕事をしてきたので、「大体はこういう事なのだろうな」と推測してきた事があるが、この本は、それを、詳細、且つ具体的に論証してくれている。


この本に書かれている事は多岐にわたるが、最も重要なメッセージは、「イノベーションとは『技術革新』の事ではない」、即ち「技術万能論への戒め」と、「『つくったものを売る』のではなく、『売れるものをつくる』」即ちマーケティング重視」の二つだ。


私自身もずっと感じてきた事だったが、「技術に強い」と言われてきた日本の会社の多くが、まさにこの典型的な反面教師となっている。「一つの強み(例えば市場不良率の低さ)」を何度も繰り返して強調し、「良いものは売れるのが当然、売れないのは買い手が分かっていないからだ」とまで強弁し、「何故自分達の商品は競争相手のように安く作れていないのか」という最も重要な問題に関しては、言葉を濁らせてしまう。そんな人達に私自身も何度も出会った。