https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

焦点:LNG価格、需給ひっ迫で一段高となる可能性

2012年はLNG生産が予想外の落ち込みとなったが、今年も増産はわずかしか望めない。


一方で需要は、アジアの急速な経済成長、日本の原子力発電所の稼働停止、ブラジルの干ばつなどで膨らむ一方となっている。

世界のLNG供給の80%が長期契約に基づく中、ブラジル、アルゼンチン、中国、インドといった短期契約に依存する国が最大の打撃を受ける可能性は否めない。

LNG生産が減少したのは過去50年で3度のみ。すでに市場がタイトとなっているため、原発事故や異常気象、突然のプラント停止などの予想外の出来事により価格がさらに跳ね上がる危険性をはらんでいる。ロイターのデータによると、福島原発事故以降、日本の輸入急増でアジアでのLNG価格はその後7カ月にわたり70%押し上げられた。

LNGは2010年台後半にオーストラリア、アフリカ、米国からの新たな供給により過剰となる可能性があるが、当面は不足が続くとみられている。

LNG生産は2000年から2011年にかけ新規プロジェクトの完成で倍増した。ただ昨年は最大輸出国のカタールのメンテナンスによる生産減、自国での需要増を背景としたエジプトやインドネシアからの供給減など予想外の要因で市場への供給が減少している。


これに対し、今年の新規主要プロジェクトはアンゴラの1件のみ。

フラワー氏の試算では、2012年の供給は約1.6%減の2億3800万トン。今年もイエメンの治安状況やインドネシアの生産減少見通しなど状況は厳しい。一方でインドや中国、シンガポールなどアジアでは新規ターミナル稼働で輸入能力が増えると予想されている。

スポット価格の上昇圧力に拍車をかけているのが、新興国の輸入に対し長期契約への移行をはかるカタールの動きだ。カタールナショナル銀行は12月、同国のLNGのスポット契約は2012─2014年から少なくとも40%減少するとの見通しを示している。


こうした動きはスポット市場の流動性を損なうとみられている。通常スポット市場では、買い手が自主的に最高価格を支払い、他の買い手はそれを受け入れなければ購入できなくなる。


こうした状況はすでに表面化している。厳しい干ばつに見舞われ水力発電量が減少したブラジルは今月、過去4年での最高価格に近い100万BTU=18ドル付近での購入を余儀なくされた。

ウォーターボーンのマーティン氏は、スポット市場の柔軟性は新規プロジェクトの稼働とともに改善するとみている。供給状況は数年のうちに好転する可能性があるという。


市場ではシェールガスブームによる米国からの供給が見込まれている。2020年までにはオーストラリアや東アフリカで新たな輸出ターミナルも整備される予定だ。


これらのプロジェクトが稼働すれば供給過剰となる可能性を指摘する専門家もいる。

また、価格高騰を受け輸入国が多様化の動きを加速させ、需要が縮小する展開も予想される。


実際インドは2008年にLNG価格が20ドル超の最高値をつけた際、ナフサに転換する動きをみせた。日本も政治や社会状況次第で原子力発電を選択肢として検討する可能性がある。


ソシエテジェネラルのアナリスト、ティエリー・ブロス氏は「代替燃料への移行は、日本で起こる可能性が高い。今年LNG供給が減少すれば、日本政府が急速に原発再稼働に傾くことも考えられる」と述べた。