焦点:中国の成長は投資と不動産がけん引、経済リバランスが喫緊の課題
世界的に見ても最も深刻とされる貧富の差の問題を解決すべく、中国政府は消費の底上げに力を入れている。しかし統計を見ると、小売売上高が10─12月のすべての月において増加しているにもかかわらず、第4・四半期のGDPへの消費の寄与は3四半期連続で低下している。
不動産関連が最も顕著な回復を見せていることを受けて、習近平氏率いる次期指導部がはたして、経済のリバランスに成功し国民の幅広い層に富を行き渡らせることができるのか、懐疑的な見方も広がっている。
コンサルタント会社GKドラゴノミクスのアナリスト、ジャネット・チャン氏は顧客向けのリサーチノートで「最近の景気回復は本物だが、中国の新指導部にとって真の試練は、その経済サイクルを管理できるかではなく、しっかりとした長期的な成長を実現できるかだ」と述べた。
中国はこの30年の発展を受けて、投資支出がGDPのおよそ50%を占めるまでになっている。これが産業の生産能力過剰を生み出し、効率性が損なわれる結果となった。国際通貨基金(IMF)も最近になって、中国の供給過剰が世界に及ぼす影響に対して警戒感を示している。
HSBCの分析によると、投資の経済全体への寄与は現在、中国政府が大規模な景気刺激策を実施した2009年以来で最大となっている。
一方、12月の小売売上高は前年同月比15.2%増と、予想を上回る8カ月ぶりの高い伸びとなったが、UBSのエコノミストによると、好調だったのは、家庭用品や家具、建材など不動産関連が中心だった。
これは経済のけん引役を交代させるのがいかに困難かを示している。
7.8%増だった中国の2012年通年のGDPのうち、最も寄与が大きかったのは消費だったが、そのシェアはわずか51.8%にとどまっており、先進国で一般的とされる70─80%を大幅に下回った。
中国の経済発展の恩恵を国民に広く実感させることが、社会の不満を鎮める最良の方法とされる。しかし先週発表された所得格差を表す代表的な指標「ジニ係数」は、2012年は0.474となり、社会の不満が高まるとされる0.4を超えた。国家統計局の馬建堂局長は、所得格差が「比較的大きい」と指摘、格差是正のための改革が急務と述べた。
GDP統計と合わせて発表された不動産販売、住宅着工、投資、住宅価格など各種指標は、軒並み堅調な内容となった。なかでも、住宅価格高騰への国民の不満は強く、政府当局者の悩みはさらに深まりそうだ。
政府は近年、価格上昇に歯止めをかけ投機を抑制する政策を実施しているが、それにもかかわらず北京の住宅価格は過去最高に迫っている。
例えば、中国人民銀行本店から徒歩15分の場所にあるマンション「チャンピオン・コート」は、販売価格が1平方メートルあたり8万─10万元(1万2900─1万6100ドル)と過去最高に達した。金融の中心地に近いことが人気を集めており、中国最大の不動産サイト運営会社サウファン(SFUN.N: 株価, 企業情報, レポート)によると、ここ1年で10%値上がりした。
公的データによると、12月の中国主要70都市の新築住宅価格は、前月比0.4%上昇した。前月比での上昇は過去6カ月のうち5回目。
不動産業者のチン氏は「正直なところ、考えられないような価格水準だ」と話している。同氏の会社は北京の金融地区の物件を専門に扱っているが、販売する住宅のうちおよそ60%が即金で支払われるという。
「チャンピオン・コート」の外見からは高額物件とは想像できない。これは、住宅価格の上昇抑制が長い道のりであることを示唆している。
「チャンピオン・コート」では先週、80平方メートル・1ベッドルームの物件が720万元(約116万ドル)で売りに出された。ロイター記者が内覧すると、浴室のバスタブはさび、壁に穴が開いていた。
中国では一般に、住宅価格を押し上げているのは成金の炭鉱関係者と考えられている。ただ「チャンピオン・コート」近くにオフィスを構える不動産業者のゼン氏によると、買い手は金融街で働く銀行家や役人。
不動産価格上昇が加速すれば、当局は年内にも金融引き締めを余儀なくされる可能性があり、回復が始まったばかりの景気にはマイナスだ。
現時点で中国経済に関する明るいニュースは、経済の回復基調が定着しハードランディングを回避したとみられること。逆に悪いニュースとしては、経済がインフラ投資や不動産市場に下支えられていることだ。