国内では、中国自身が認めているように、経済成長を維持することが優先課題だ。一方で、そうした急成長に伴う貧富の格差や腐敗、環境汚染といった問題では庶民の不満や怒りが高まっている。
国外に目を転じると、中国は日本との関係修復を望む兆候を示しているほか、アジア重視を掲げる米国との関係や、挑発姿勢を強める北朝鮮への対応などに注力することになりそうだ
<経済改革、不満と反応>
中国は2015年までの5カ年計画で経済成長率目標を年間7%に設定しているほか、2020年までに国民1人当たりの所得を倍増させる計画を示している。
この実現のためには生産性を大幅に向上させる必要があり、新たに任命された当局者らは、非効率で債務を抱える国有企業が主な改革の対象になると示唆している。
李克強首相の改革プランについて、詳細は依然としてほとんど分からず、最初のプログラムが公表されるにはあと数カ月かかるかもしれないが、所得再分配や民間投資の促進、投資や輸出主導型経済からの脱却を図る一方、内需拡大のために都市化政策を進める見込みだ。
広範囲の改革に取り組む一方、中国の政策当局者は民衆の不満にも敏感になっている。政府は今年、国内の治安維持などに使われる予算として7691億元(1237億3000万ドル)を計上。再び国防費を上回る水準となった。
インターネットの発展につれて当局の監視も困難さが増す中、散発的な暴動事件が深刻な混乱に発展することを当局は警戒。賃金の上昇が止まったり、国民の経済的な機会が閉ざされたりすれば、こうしたリスクは高まるとみられている。
官僚や企業幹部の腐敗や、工業化の進展に伴う深刻な環境破壊も庶民の怒りをかき立てている。政府にとって最大のリスクの1つは、こうした民衆の怒りに過剰反応し、あまりにも厳しい対応をとることだ。そうなれば、民衆の政府に対する嫌悪感が増幅され、国際的にも歓迎されないだろう。
注目点:
─経済改革の詳細な内容とそのインパクト。
─経済成長率、インフレ、消費支出に関する指標。
─民衆の不満レベル。どのように表わされ、それに政府がどのように反応するか。
<外交>
中国は自身を軍事的脅威とする見方を繰り返し否定しているが、日本やインドといった各国政府はその軍事能力に懸念を示し、中国軍が挑発を強めているとして警戒している。
尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題をめぐる日中間の対立は深刻さを増し、日本では平和憲法改正の声も出ている。
それと同時に、ベトナムやフィリピンなど東南アジア諸国との間にも、南シナ海の権益をめぐって対立を抱えている。
こうした対立が戦争につながる可能性は薄いとみられるが、域内の軍拡が進み、米軍のプレゼンスとも相まって国際的な緊張が高まることになる。
中国政府にとって喫緊の課題は北朝鮮への対応だ。中国は過去数十年間にわたり、米国が影響を及ぼしている韓国との間における緩衝地帯として北朝鮮を支援してきた。
北朝鮮の新体制がミサイル発射や核実験を強行する中、中国は友好国に対する影響力を再考することになるだろう。北朝鮮を見放したり、崩壊の危険を高めたりすることはなさそうだが、中国政府にやっかいな隣国を何が何でも支援したいとの考えは薄く、大半の中国人も北朝鮮のふるまいを苦々しく思っている。
注目点:
─南シナ海における対立が解消される可能性とその解決方法。
─域内の軍拡競争。特に日本の軍備増強。