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原因は流動性の不足だったのか - 『大恐慌論』

一般向けの本では、いまだに「有効需要の不足」が大恐慌の原因だったというケインズ的な説明が一般的だが、そういう価格の硬直性だけで10年以上にわたる大恐慌を説明するのは無理がある。この通説に膨大な実証データを使って挑戦し、流動性の不足が原因だったことを明らかにしたのが、Friedman-Schwartzの大著だ。

本書(原著は2004年)は、現FRB議長がFriedman-Schwartzを踏まえて、さらに詳細なデータの分析と国際比較を行なったものだ。ここで著者が指摘しているのは、金融機関の破綻が取り付け騒ぎを誘発し、それがさらに破綻を拡大するというDiamond-Dybvigの複数均衡だ。FRBがこれを放置した結果、信用収縮が起きて決済機能が寸断されたことが、名目GDPが半減して失業率が25%になるという破局をもたらした。

本書が指摘したのは、金本位制がデフレを海外に伝播させたという国際的要因だ。これは日本でも、1930年に浜口内閣が行なった金解禁でよく知られている。要するに大恐慌は、金本位制の欠陥とFRBの誤った金融政策が、景気循環を人為的に拡大して世界に波及させたものだ。変動相場制では金融政策の影響は為替レートの変動で遮断されるはずだが、為替投機によって国際的な連鎖反応が起こった。

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