「日本の金融緩和は米国の3倍もパワフルだ」ジョージ・ソロスが日銀の采配を高く評価するワケ
【今回のまとめ】
1.ジョージ・ソロスは財政ファイナンスを肯定している
2.財政ファイナンスとは中央銀行が新発債を直接買い入れることを指す
3.財政ファイナンスが「禁じ手」なのは一度はじめると病みつきになるため
4.これからは預金や日本国債はダメ。株や外国債などにシフトせよ
5.欧州は日本の二の舞を演じている
6.ECB(欧州中央銀行)は金融緩和の余地があるのに緩和していない。ユーロがそれほど下がっていないのはそのため
今年のカンファレンスで基調演説を行ったのは、英国のFSA(Financial Services Authority、金融サービス機構。金融サービス全般を監督する官庁、日本の金融庁に相当)の元長官、ロード・ターナーでした。
その演説は、これまでタブーとされてきた財政ファイナンスを積極的に奨励する、型破りなものでした。
財政ファイナンスとは、日本銀行などの各国の中央銀行が、新発債を直接買い入れることを指します。なおソロスは、ターナーの主張を自らの信念に理論的な裏付けを付与するものとして全面的に支持しています。
それにもかかわらず財政ファイナンスがとりわけ「危ない」とタブー視されるのは、その経済学上の運営・管理のむずかしさ故ではなく、むしろ政治的な理由によると彼は主張します。
つまり、いちど財政ファイナンスを始めてしまうと、国民はそれのもたらすモルヒネ注射のような気持ちの良さの虜になってしまい、止めなければいけない時期が来ても、今度は「なぜ止めるんだ!」という意見が強くなって止められなくなってしまう、そこが「危ない」というわけです。
こうした点で、ターナーは財政ファイナンスの孕んでいるリスクを決して軽く見ているわけではありません。
しかし、日本が過去25年間辿ってきた「緩慢な死」への道を歩むよりは、リスキーでもこれを試してみる価値はあるというわけです。