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インタビュー:日銀緩和は事実上の資産バブル宣言=加藤・東短リサーチ社長

──日銀が2年で2%の達成を目指して導入した今回の緩和策をどうみるか。


「オーソドックスに需給ギャップを埋めて2年以内に2%に持っていくことは事実上不可能と日銀もわかっているので、いかに期待に働きかけるかということだろう。フィリップス曲線の傾きを立てて、成長をやや加速するとインフレが従来より上がりやすくなるという環境を作りたいということだと思うが、結局は資産バブル、円安バブルを起こすということが明確なメッセージだと思う。かつて日本で中央銀行が資産バブルを起こそうとすることを明確に事実上宣言したケースはなかったのではないか」


「先行き仮に2%に達したら、そこから抜け出すことが非常に困難な政策だと思う。インフレ目標が2%とセットされているから(緩和を)やめられるんだという楽観的な見方は危険で、先行きの出口政策への準備は表には出さなくとも水面下では検討すべきだと思う」


──米連邦準備理事会(FRB)と比べてどうか。


「(FRBの緩和策に)今回で追いついたかあるいは追い抜いたといえるだろう。出口政策の困難さという点では上回ったのではないか。金融危機対応のQE1を除けば、FRBは直接リスク性資産は買っていない。MBSは買っているが、フレディマックファニーメイギャランティがあるもので、一応間接的な政府保証がある」


──副作用やリスクをどうみるか。


「フィスカルドミナンスという問題に直面していくだろう。国債の発行量の7割を購入するというのは強烈だ。日銀が国債を買うことで需給に見合って長期金利が低下するが、そういう状態が長期化し、人為的に国債金利を低く抑えつけていることに慣れてしまうと、モラルハザードが起きる確率がかなりある。今は世界経済が上向きだが、これが萎(しぼ)んでしまうと財政出動の議論が出てきやすくなり、日銀が買っているから大丈夫となって財政赤字が膨らみやすい」


「将来、(緩和政策を)正常化する際に、本来は日銀が国債を売却する必要があるが、その手前の議論として国債買いオペをスムーズに減らせるかというところで大きなハードルが出てくるだろう。オペを減らし、長期金利が上がりそうな時に『これは必要な引き締め措置だ』と言えるか。2%になっても『安定的に持続的に必要な時点まで』というコミットメントがあるので、なかなか難しいのではないか」


──2年で2%という目標は達成できるか。


「まだ1年から2年先の話だが、おそらくどこかで無理して2%はやらなくていいという議論に変わってくるのではないか。究極的には景気を良くしたいという議論なので、あらゆる歪みを乗り越えて2%にすべしという議論は、よく考えると、とくにそれを望んでいる国民はいないという話になるだろう」


「消費税率の引き上げを急ぐと消費の腰を折るという議論もあるが、日銀がこれだけ大量に国債を購入すると、財政ファイナンスとみられないようにする必要がある。政府がある程度、財政再建に向かって動いているというポーズは必要。政府は財政にモラルハザードを起こさないという意思を見せ続ける必要がある」


──日銀はあれだけの国債を買えるのか。


国債市場を壊していくのだろう。そこはやはり問題だ。これまでは日本政府の大量国債発行を消化できるように日本の国債市場、レポ市場の機能を徐々に高めてきた。その機能を今中銀が壊している。これが長期化すると、市場の縮小とともに市場機能も後退するので、元に戻そうと思ってもすぐに戻せなくなる」


──前回の量的緩和との違い。


「前回は日銀が購入する資産は基本的に短期だった。1年以内の資産が中心で、長期国債買い入れも増やしたが、基本的な部分は短期資産の積み上げで、それによる期待への働きかけを狙ったが、限界があった。中銀の資産にどのようなものを入れるか。構成要素の変化という意味での質的緩和を伴わないとポートフォリオリバランスを起こさせにくいということだと思う。単にマネタリーベースを増やすだけでは前回もやったけどだめだったと黒田総裁は思っているのだろう」


「福井総裁の時代は長期国債の買い入れは増やさなかった。短期市場の機能は悪化させたものの、長いところは市場の期待を許容していた。今回はそういう意味で、財政赤字に対する市場のウォーニング、アラートが出にくい政策となる」


──日銀の信頼性、独立性はどう変わるか。


「先進国の中銀の中では日銀の独立性がいま一番低い状態になっていると思う。ただ、黒田総裁が今回こういった政策をうったことで、政府から信認を得て、そのリソースが将来の出口政策に使えればいい」


「2年でもし2%達成したら、日銀は賞賛され、ある程度出口政策をやれる政治的資源を得ている可能性がある」


──今回の政策は何をもって成功と判断すればいいか。


「基本的には一般の人々の景気への感覚というのは給料が増える、あるいは家族が雇用されたというところで実感される。賃金・雇用に表れてくれば必ずしも2%にいかなくても成功したと言われるだろう」