でも、ラガルド専務理事は、もろ手を挙げて賛成している訳ではありません。こうした超緩和策には副作用が伴うと釘を刺した上で支持をしているのです。
いずれにしても何故彼女は支持するのか?
いろいろと理由はあると思うのですが‥今、一番大きな理由としては、日本の異次元緩和策によって欧州の国債の利回りが低下し、その結果、欧州の債務危機を収まらせるのに一役買うことが分かったからからではないでしょうか?
やっぱりどこの国も、何か言っても、結局、自国のことが大事だということなのです。
では、バーナンキ議長も少し前から、日本の異次元緩和策を支持していることはご承知だと思うのですが、何故彼は積極的に日本の政策を支持するのか?
いずれにしても、この件に関し、日経は最近独自の考えを示しているのですが、お気づきですか?
こんなことを言っているのです。
・3月31日
「FRB議長の深慮遠謀 金融緩和の出口戦略にらむ」
「出口戦略を有利に進めるしたたかな計算が働いた可能性がある。「緩和のリレー」のバトンを受け継ぐ黒田東彦・日銀総裁は難しいかじ取りを迫られる。大胆緩和に突き進んでリレー最終走者になった時、世界の金利が上昇していれば軟着陸は格段に難しくなる。リレーがババ抜きと化す危険がある」(財満大介)
・4月12日
「異次元緩和 期待の先に」
「米国の日銀支持は、米量的緩和第3弾(QE3)の出口戦略に伴う世界的な流動性減少のショックを日銀が和らげてくれるという思惑があればこそ」(編集委員 菅野幹雄)
要するに、日経は、米国が日本の異次元金融政策を支持するのは、米国が出口政策に着手するのに都合がいいから、と言っているのです。
果たして、そうなのでしょうか?
そんなに早々と米国は、超緩和策を転換することができるのでしょうか?
だって、まだ失業率は7.6%もあるのですよ。幾ら株価が史上最高値を更新していると言っても、失業率の水準が歴史的にみて高すぎることは事実。それに、バーナンキ議長は、昨年末、米国の失業率が6.5%に低下するまではゼロ金利政策を続けると明言していたではないですか。
いずれにしても、バーナンキ議長が日本の異次元金融策を支持する理由を私なりに整理してみました。
1.先進国が一斉に緩和策を採用すると、金融政策の効果が一層大きくなる。(バーナンキの主張)
2.日本が異次元緩和策を採用することで、米国が通貨安政策を採用しているという批判を緩和することができる。 (途上国側の見方=推測)
3.日本が異次元緩和策を採用することで、米国が出口戦略に移行しやすくなる。(日経の見方)
4.日本が異次元緩和策を採用すれば、必要以上のドル安を回避することができるので、米国としては雇用が十分に回復するまで超緩和策を継続することが可能になる。(日経とは逆の見方)
5. 日本が異次元緩和策を採用することで、中国の人民元の価値を上昇させる効果がある。
6. 日本が異次元緩和策を採用すれば、欧州の債務危機を収束させることに役立つ。
しかし、私は逆に、米国はまだまだ緩和策を取り続ける必要があるので‥つまり、失業率を6.5%まで低下させるために緩和策を取り続ける必要があるが、米国の緩和策だけが際立つと、この先一層ドル安を招きかねず‥そして、緩やかなドル安であれば歓迎できるが、余りにも急速なドル安が起これば、米国からの資本の逃避を惹起しかねず、そのことに対する懸念があるものだからドル安を起こさせない日本の異次元の緩和策を支持したと思うのです。
プラス、昨年までの超円高がそれ以上続けば、同盟国の日本経済がさらに弱体化する恐れがあり、それは米国にとっても都合が悪いという見方があったのではないでしょうか。
ということで、私は、米国が日本の異次元の金融政策を支持する本当の理由は、主に4の理由だと考えるのです。