米国が円安をけん制してきたことで、円高・株安が進んでいる。短期的な過熱感が強まっていたことから適度な調整と受け止められ市場に動揺は広がっていないが、欧州や新興国が批判に加われば「日本包囲網」が敷かれるとの警戒感もある。
ただ、米国を含め先進国は日銀緩和策を批判すれば自分たちの金融緩和策との整合性を問われるため、「杞憂」にすぎないとの声も出ている。
米財務省は12日に公表した半期に一度の為替政策報告書で、日本の経済政策が競争上の優位性を得るための円相場の引き下げを目的としたものでなかったか注視するとの立場を示した。「われわれは日本に対し、G7、G20の一員としてこのコミットメントを順守し、競争的な通貨引き下げ、競争上の目的に基づく為替相場の目標設定を控えるよう促す」とし、日本の政策が内需の伸びの支援を意図としたものか、緊密に注視するとした。
100円手前で足踏みを続けていたドル/円は、3月小売売上高など米国の経済指標がさえなかったことに加え、円安けん制を嫌気し、日本時間15日未明に97.60円まで急落。押し目買いが入り一時、98円後半まで戻したが、中国の1―3月期GDP(国内総生産)の伸びが予想を下回ると再び円買いが強まった。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事など、日銀の緩和策に対して支援の声もあるが、市場では18日からの主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で欧州や新興国に日本批判が広がるのではないかとの懸念が強まっている。「『外圧』が規制緩和や構造改革につながればいいが、内需振興策が不十分と評価されれば最悪、日銀緩和策の見直しにもつながりかねない」(外資系証券)という。
ただ、先進国の間ではそれほど日本批判は強まらないとの見方もある。新興国は先進国の金融緩和で通貨高とインフレに苦しんでおり、日本への批判を強めそうだが、自分たちも「超」が付くほどの金融緩和を行っている米国や欧州は日銀の金融緩和策を面と向かって批判はしにくい。