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アングル:ドル100円突破は仕切り直し、外債投資に慎重な国内生保

ドル/円が100円手前で再び足踏みしている。オプション絡みの売りに跳ね返されたことに加え、米中の経済指標がさえないことも圧迫要因だ。現在、市場の最大の関心事である国内機関投資家の外債投資だが、今のところ慎重姿勢を崩さない生保が多い。

<日生の運用計画に「失望」>


前週ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議で、「お墨付き」を得たはずの円安基調が1日で反転してしまった。前日の海外市場で、ドル/円は何度か100円をトライしたが、大台手前に大量にあるオプション絡みの売りに阻まれ失速。日本時間の午後4時までに一時98.56円まで円高が進んだ。


米3月中古住宅販売や4月HSBC中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が弱かったこともあるが、為替市場の失望を誘ったのは、22日夕方に発表された日本生命保険の2013年度の運用計画だ。


日本生命保険は2013年度の一般勘定資産について、「円金利資産7割・それ以外で3割」とする運用姿勢を維持し、引き続き安定収益の確保を狙うことを明らかにした。国債利回りが低いまま推移するなら、超長期国債への投資を抑制し、為替ヘッジの付いた外債などでの運用を検討するとしたが、オープン外債については「いまの(為替)水準ではコーシャスに構えたい」と慎重姿勢を崩さなかった。


松尾憲治・生命保険協会会長(明治安田生命保険社長)が19日の会見で「外債を買い増していくことが1つの選択肢」と発言したことで、市場の一部では期待感が高まっていたが、肩透かしを食らった格好だ。前日からきょうにかけて、国内投資家の円売りが出てくると見越して円売りポジションを構築していた海外勢がポジションを解消する動きが見られたという。

<大台突破には別材料が必要か>


現在、為替市場の最大の関心事は国内機関投資家の外債投資だ。毎月の国債発行額の7割に当たる量を日銀が買い取るという大規模緩和により、イールドカーブはいずれフラット化し、国内投資家の運用資金は外債に向かわざるを得ないとの思惑が出ている。ヘッジなしであれば、外債投資は円安要因となる。


だが、一部の思惑に反し、財務省が毎週発表している「対外及び対内証券売買契約等の状況」では、4月7日―4月13日の国内勢の外債投資は3319億円の売り越しとなった。前週も1兆1397億円の売り越しとなっており、引き続き運用資金が海外に向かう動きは確認できていない。


バークレイズ証券のチーフ外債・為替ストラテジスト、高橋祥夫氏は、生保のフローについて、1)本格的なアロケーション変更は日本国債利回りやドル/円相場がある程度落ち着いてから行なわれる公算が大きい、2)現時点では米欧の短期金利が低水準でヘッジコストが低いため、為替ヘッジなしで外債投資を拡大するインセンティブに乏しい、3)オープン外債が大幅に増加するのは海外(特に米国)で出口戦略の議論が盛り上がってヘッジコストが上昇するか内外金利差が十分に魅力的な水準まで拡大した後となる──との見方を示している。


今週は生保の運用計画発表が相次ぐが、ある大手邦銀関係者は「政府が旗を振る中で、生保各社もお付き合い程度で海外に資金を振り向けざるを得ないだろうが、相場を持ち上げるほどのインパクトはないだろう」と冷めた見方を示す。


日米金融政策のスタンスの違いや貿易赤字の定着など需給構造の変化もあり、ドル/円は自然と円安圧力がかかりやすい。「海外勢は常に円売り材料を探している」(外資系証券)状況も変わらず、100円の回復期待がしぼんだわけではない。ただ、世界的なリスク選好の動きにやや陰りが出てきているなか、大台突破には生保の運用動向以外の材料が必要になる可能性も出てきた。