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金が足りない、日本買い越し転換も−インフレ懸念で需要旺盛

アベノミクスに伴う円安進行やインフレヘッジ目的を背景に、日本の個人投資家の金需要が旺盛だ。先週の金相場急落をきっかけに買いに拍車が掛かっている。日本での消費者の金需要は売却が購入を上回る売り越しの状態が続いてきたが、2005年以来初めて買い越しに転換する可能性も出てきた。


金の業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金貨を含む金地金の売り越し量は昨年には10トン(暫定値)と前年比約8割減少した。南アフリカのスタンダードバンク東京支店の池水雄一代表は「日本は遅かれ早かれバイヤーになり、中国やインドと金を奪い合うようになる」と予想する。WGCによると、世界最大の消費国インドと2位の中国は昨年それぞれ312トン、266トンを買い越した。


日本では1980年−90年代に金地金や金の宝飾品を大量に購入した個人が、相場が上昇した時点で利益確定のための換金売りを増やす傾向があり、金の売り越し状態が続いていた。


日銀の黒田東彦総裁は、2%の物価上昇率実現に向けマネタリーベースを2倍に拡大する政策を打ち出した。先週末の20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議では日本の金融緩和策への理解が示されたとの受け止めから、円相場は一時1ドル=99円90銭まで下落。円は今年に入ってドルに対し13%下落している。


金の買いが急増した背景には、ドル高円安が進むことによる円建ての国内金価格の上昇期待や、アベノミクスが唱えるインフレを先取りし、資産が目減りする現金などを保有するよりも金の価値上昇が見込めるとの思惑がある。15日以前は国内金価格が33年ぶりの高値を付けており、換金売りの顧客で目立っていたが、情勢は180度転換した。


顧客殺到で在庫不足に


海外で金相場が急落した先週、金地金を扱う田中貴金属工業の銀座本店には18日までの4日間で約1200人の顧客が詰め掛けた。通常は1日当たりの来店者数は100人程度。16日には約500人の顧客が殺到し金地金が不足、工場からの配送量を増やしたり、スタッフを増員したりするなどの対応に追われた。


田中貴金属の原田和佳子・貴金属市場部長は「相場が下がるとすぐに買いが入る状態」と述べ、「円安による円資産の目減りの懸念やインフレヘッジなどの意識が強まっている」と話す。同社の16日の税込み小売価格は前日比12%安の1グラム当たり4408円まで下落。10日は5338円と1980年以来の高値を付けていた。


石福金属興業(東京千代田区)も18日までの4日間で本社と名古屋、大阪、九州の各営業所での金地金の販売合計が通常の1カ月分に達し、在庫が不足。管理部資材グループの田中秀治氏によると「お渡しには時間がかかります」と顧客に説明している。


30年以上金の動向分析に携わる豊島逸夫氏は「今後3年くらいは金の買いよりも売りが続くだろう。まだバブル時代から退蔵された金がすべて売られたとは思えないからだ」と語る。それでも「1−2年後にアベノミクスによるインフレが本当に2%あるいはそれ以上になるという状況になると、インフレ懸念から新規の投資家が入ってくる」とみる。


主婦も関心


新宿高島屋(東京都渋谷区)では金製品の販売を手掛ける「ゴールドショップ」を19日から開店した。買い取りコーナーも常設。高島屋広報部の山川真由美氏は「もしものときの資産性としての金の価値が見直されており、一部の投資家だけでなく主婦や高齢者まで一般消費者にも裾野は広がっている」と説明する。


6月末に一時閉店する東京銀座の松坂屋。売り尽くしセールの一環として金の特設販売を15日まで行った。810万円の急須・湯のみや、530万円の仏具の鈴などの高額商品も売れたという。会場では200万−300万円の金製品などに「御約定済」との札がいくつも貼られていた。


主婦で都内在住の橋本冬子さん(57)は1枚10万円する12グラムの純金製開運小判を3枚購入した。3人の娘さんに将来贈る予定という。「金に目がくらみ衝動買いしてしまった」というが、「損することはしたくない。金の価値は永遠に残るし、お金などを残すよりもよほどいい」ときっぱりと言い切っていた。